出版社内容情報
長年連れ添った妻を亡くし、茫然自失と過ごす毎日。偶然出会った思川はふしぎと安らぎを覚える川だった。一筋の流れは時間であり、区切りでもあるのだろう。死別から五年、再出発を期して送り出す第九歌集。
内容説明
長年連れ添った妻を亡くし、茫然自失と過ごす毎日。偶然出会った思川はふしぎと安らぎを覚える川だった。一筋の流れは時間であり、区切りでもあるのだろう。死別から五年、再出発を期して送り出す第九歌集。
目次
マゼラン
人
トリニダード・トバゴ
婚
寸感
常滑の急須
めだか
猫の虫歯
紅梅
ん〔ほか〕
1 ~ 1件/全1件
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
だいだい(橙)
18
2010年から2013年の間に詠まれた短歌を自選して500首以上がおさめられている。2010年に奥様の和子さんが癌で亡くなる。その後、東日本大震災と仙台に住む小池さんには災難が続くが、母が生きている間にと結婚した娘の志野さんに子供が。初めて孫を持つことになる。それでも妻の死の辛さがはるかに上回り、静かな中にも悲しみがしんしんと伝わってくる。短歌は一人称の文学、と言われるが小池さんの作風はまさにそれで、等身大の飾らない自分を詠んでおられる。その「ただごと」歌のすべてが沁みる。読んでよかった。2021/10/31
双海(ふたみ)
12
長年連れ添った妻を亡くし、茫然自失と過ごす毎日。偶然出会った思川はふしぎと安らぎを覚える川だった。一筋の流れは時間であり、区切りでもあるのだろう。死別から五年、再出発を期して送り出す第九歌集。「肩の上にかくあたたかく雪つもる夢の中にて思ひあふれて」「よろこびに満ちてふたりはただ居ればわが感情はしづかとなりぬ」「こすもすの畑もとうに枯れはててくる白雪を待てるしづけさ」「着物だつて持つてゐたのに着ることのなかりしきみの一生(ひとよ)をおもふ」2023/07/05
はち
7
小池光さんの歌は苦手、と思っていたが、この歌集はあたたかい緑茶のように染み入ってきた。妻を亡くし、子供たちも結婚し、猫と暮らす。自らは次第に老いていく。妻の不在を思う。簡単に言うとそういう歌集なのだけれど、淡々と読まれる日々の小さな思いが短歌の形式にぴったりはまり、何首読んでもぬくい気持ちになる。多分それは猫の存在が大きいし、自らを抑え気味に表現する小池光さんの力の強さが大きい。読み終わるのがもったいない歌集だった。2016/06/03
yumicomachi
6
家族の短歌が多い。亡き妻を偲び、老母を思い、娘や孫をいつくしむ。また、猫の歌も多い。共に暮らす生き物として、家族というよりは少し冷静に観察しているが、やはり根底には愛情が感じられる。作者の実年齢にしては、老いを意識しすぎているというか過剰に演出しすぎているという感じもしたが、読者の好みの問題だろう。2016/08/03
Cell 44
4
「森と林はどう違うか。あるとき父に聞いた。森にはムササビが棲む、フクロウが棲む、それからお姫様などが棲む、と父は答えた。/それでは林には何が棲むか、こどもは尋ねた。/父は、しばらく考えた。そうしてこころもち小さな声で、/炭焼き、と答えた。」2016/02/10