出版社内容情報
尊皇攘夷の首謀者が現代の青年の躰に乗り移った――!?
茨城で農業を学ぶ風子の前に現れた青年・雷太は、筑波山の原爆を捜していると打ち明けた。彼が戻ると、江戸末期に尊皇攘夷を標榜した田中愿蔵が乗り移っていた。異界への入口を掴んだ彼らの暴走を止める戦いが始まる
内容説明
加波山のふもとにある農学校に入学した風子。外国暮らしが長い彼女にとって見るものすべてが珍しい日々を過ごしていた矢先、バイクに乗った放浪青年、雷太が現れた。加波山に隠された「あるもの」を捜していると打ち明け、毎日のように山へと入っていく彼だったが、ある日戻ってくると別人のようになっていた。尊皇攘夷を標榜して天狗党の乱を首謀した田中愿蔵が、雷太に乗り移ってしまったのだ。強烈な怨念が、雷太の社会への怒りと共鳴し、そして―。風子たちは愿蔵と雷太の暴走を止めることができるのか?最大スケールのホラー長編。
著者等紹介
宮ノ川顕[ミヤノガワケン]
1962年、福島県白河市生まれ、神奈川県育ち。日本大学卒業後、会社員を経て、茨城県石岡市で自転車競技や釣り用のウェアを作る自営業に従事する。2009年「化身」(受賞時タイトルは「ヤゴ」)で第16回日本ホラー小説大賞大賞を受賞し、小説家デビュー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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nyanco
20
アメリカ帰りの風子が農業体験をしているあたりの話はそれなりに面白かったんだけど、水戸天狗党の亡霊と、アメリカ軍の原爆・・・あまり無茶ぶり・・・ おまけに後半はグダグダだし・・・ 『化身』は、良かったんだけどね~ 市立図書館になくて、他の図書館から取り寄せまでしてもらったのに・・・ あまりにもう~~~んでした。2012/04/01
たぬ
13
☆3.5 表紙とタイトルからして尖った時代ものかなと思ったらそうではなかった。まあ天狗党が大きく絡んでくるから全く違うとは言い切れないけど。非科学的な要素が強いものは嫌いじゃないけど、これはちょっと荒唐無稽すぎてそこまではまれなかったなあ。とはいえ終盤の横須賀基地に乗り込んだ雷太のシーンは少しばかりドキドキした。小四郎は元々あっちの世界から来たのかもしれない。だからああいう最期になったのだろう。2024/09/29
惠
12
中途半端。ホラーでもなく心の裡をつくわけでもなし。犬、刀etcモチーフが活かされていない。小四郎への試練でさえ必要性が見えない。尊王攘夷と日米の不平等な地位を重ねて…っていう意図はわかる。だけど余計なものが多すぎてまとまりがない。キャラも薄く風子に雷太にさえ感情を抱けない。場面展開の配分も失敗かな。「前書き」が長すぎで中身が少なく、ラストはバッタバッタ。山場をもっと前に持ってきて丁寧な描写があらばもう少しなんとかなったのでは?あまりお上手ではないですね。しかし『化身』は皆さん絶賛のようなので読んでみたい。2012/02/14
ろっか
10
天狗と戦争をつなげるための前置きが長くて、斜め読みでした。原爆、黄泉の岩戸、刀、モグラとあちこち話が飛んで、広くて浅くてつまらない。もっと絞って突き詰めてほしい。宮ノ川さんの「化身」は好きなんだけどな。ただ、風子の言葉に共感。「誰もが被害者であり、誰もが加害者だというような、つまり分かったような気持ちにだけはなりたくない。」2013/02/20
Le Petit Prince
9
これまでの作品とは違った存在感がある作品にはなっているのだが、ちょっとしたミステリ要素が邪魔したかなーと。この作家の魅力は丁寧な文章で描かれた”人間”だと思うし、ホラ大受賞者といえど、やっぱり純文の作家だと思っているので、もっと内面的なところを中心に物語を展開させてほしかったなーと。次の作品は是非書きたいものを書いてほしいです。なんてことを生意気にもw2012/01/18