内容説明
姫路・夢前川の製鎖工場で、男の遺体が発見された。あくどい商法で知られた不動産業者。疑いの目は工場の持ち主で、被害者への巨額の連帯保証債務を抱え苦しむ、女社長に向けられた。しかしベテラン刑事・岩田は見抜いた。この事件には、共犯者がいる―暴かれてゆく過去の因縁。真犯人は、そして犯行の真の意図とは?社会派ミステリの旗手、最新作。
著者等紹介
大門剛明[ダイモンタケアキ]
1974年三重県生まれ。龍谷大学文学部卒。『雪冤』で第29回横溝正史ミステリ大賞、及びテレビ東京賞をW受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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takaC
68
情のアンカーチェーンというメインテーマの裏に、犯罪のチェーンというもう一つの太く強い鎖が暗喩的に描かれている高度にブラックな社会小説。それ故にスッキリしない読後感。2013/09/17
さっこ
57
連帯保証人制度が浮き彫りにする負の連鎖。悪が逃げ延び善が馬鹿を見るといった問題から殺人へとつながっていきます。地域の親の代からの信頼や見守り繋がりを描いていますが、3億もの負債を背負わされた翔子の人物像の描写が弱かったように思えて、そこまで皆が一生懸命になるのがピンとこない部分もありました。それでもラストあたりはビックリさせられる事実が出てきて読み応えありました。やっぱ連帯保証人にはなるものではないと改めて思わされました。2019/06/29
きさらぎ
51
大門作品には大抵、度を超えたいい人が登場する。ここまで自分を犠牲にして人のために尽くす人物像だと、逆に冷めてしまう。作り物の不自然さを感じてしまう自分に対しても嫌気が差すのであまり好きじゃない。もっと現実的なキャラ設定にしてほしい…とか言いつつ、ラストのどんでん返しを期待してついつい読んでしまう作家さんです。2017/05/20
ゆみねこ
50
父の遺してくれた「弓岡製鎖所」を引き継いだ翔子。彼女が背負った連帯保証による莫大な借金。殺人事件が起こり犯人を追う二人の刑事。巨大な鎖は船をつなぐもの、そして居酒屋「利庵」に集い翔子を助けたいと思う人情の鎖。真犯人はちょっと意外な人物でしたが、2時間ドラマの原作っぽく感じてしまいました。2014/06/17
薦渕雅春
37
著者の7年ほど前の書き下ろし。なかなか面白かった。様々な登場人物、年齢も幅広く、職業もバラエティーに富む。人物描写も細か過ぎず、かといって性格も掴めるほどに上手に語られている。単純な殺人事件ではなく、色々な思惑や 過去からのしがらみで ストーリーが展開。ベテラン刑事・岩田 の緻密な推理、駆け出しの刑事・池内 準規 も最初は頼りないのかと思わせておいて鋭くなって行く。良い味出してるのは やはり居酒屋・利庵 の大将 鳴川 仁。この作品も映像化されれば面白いと思う。連帯債務に苦しむ女性経営者・翔子 には 誰が!2018/07/25