内容説明
1950年代、大阪近郊の小さな町。少年は印刷所の片隅でSF小説を読みふけっていた。友人に手渡された翻訳小説に描かれていたのは、人類による地球脱出の物語だった。生物種の最後の一頭が息絶えるとき、人類進化の素“ロータス”を吐き出すという。自分以外の何者かになりたいと願う3人の少年たちは、見世物小屋で「三つ目ヤマネコ」が吐き出す“ロータス”を飲んだ。そして混乱のうちに悲劇は起こった。それから半世紀後、越野町では大学の新キャンパス造成が急ピッチで進んでいた。学校関係者の子供たち3人は夏休みに、ある秘密を抱えた少女を日本に呼ぶことを計画する。少女の願いを叶えるために…。
著者等紹介
早瀬乱[ハヤセラン]
1963年大阪府生まれ。法政大学卒。2004年『レテの支流』(日本ホラー小説大賞長編賞佳作)でデビュー。06年『三年坂 火の夢』で江戸川乱歩賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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RIN
20
二段組みで500頁超の大作。早瀬さんらしい、この先いいことなんて何も待ってないんじゃない?みたいな雰囲気で物語は進む。小学5年生の子どもって外の世界に目を向け出す時期なのかな。そんな子どもの抱える葛藤や希望や絶望や・・・。戦後から現代まで世代を繋いで紡がれる子どもたちの夢と哀しみは切なく、オトナになってしまった自分らには二度と作り出せない世界。とはいえ、子どもの世界の話ではありません。早瀬さん、超寡作だが次作が楽しみ。2016/10/31
kishikan
13
ウ~ん、重かったなあ。量的にも質的にも。なにせ、2段512ページの大作だもの。SFとしては、「ブラッドベリ」ファンはうなってしまうのかもしれないけど、僕はあまり化学は好きじゃないもので・・・。それに、場面と時があまりにもめまぐるしく入れ替わるので、理解しながら読み進めるのに一苦労。子どもから大人への成長を人類の進化と対比しつつ、社会の発展というものをアンチテーゼとした、壮大なSF小説に挑戦した早瀬さんの意気込みは伝わってくるんだけどなぁ。でもこの物語のキイになっている「ロータス」の発想には脱帽もの!2011/08/27
たこやき
10
50年前と現在、二つの時代の少年たちを結ぶロータスという謎の存在。時代性などを絡めながら、一方で、子供たちの純粋さ、悩み……そういうものを感じた。鍵となるロータス、という物質の使い方が絶妙で、そこでしっかりとひきつけられた。ただ、さすがに、分量が多く、時代が交錯したりするので簡単に入りづらいのが欠点か。もう少しスッキリとまとめてくれれば、より読みやすかったかも、と思う。2011/09/03
外道皇帝
6
生物の種の最後の1匹が死ぬ時に吐き出す「ロータス」という進化の素を題材にしたSFを読んだ少年たちの幻想と妄想の物語。1950年代のSF黄金期への思い入れたっぷりに描かれていてむちゃくちゃに懐かしいし、ロータスの実在の不確定さも物語を面白くしている。好きだなあこういうの。 2011/07/17
ぷりん
4
読了まで数日を要した長い長い作品だった。第一部の「ロータス▪イーターズ」が一番面白かったかも。とあるSF小説を軸に子供たちが中心になって話が進んでゆくのだが、子供ゆえの純真さが仇となり、結果、重たい展開になる。子供たちの気持ちを考えると胸が痛む。作品としては少々回りくどく長過ぎる感が否めないが、親として、子供の立場で考えてみるという大事なことに改めて気付かせてくれた点は評価したい。2013/07/17
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