内容説明
病死した戦友の息子・野本精一から金の無心をする電話がかかってきた。私は何も聞かず借金を肩代わりしたが、精一はある男に怯えていた。その男は私もよく知るN市の酒場“ブラディ・ドール”の経営者、川中良一だった。川中は精一を殺すという。川中がそこまで本気になるには、よほどの理由がある。だが、あえて私は精一を守ることにした。戦友の息子という、ただそれだけのために―。戦禍で多くの命を救えぬ過去を持ちながら、街の実力者として君臨してきた自らの人生を嫌悪する久能義正。最愛の人や大切な者を喪失しても、生き続けるしかなかった川中良一。ついにふたりが互いの生き様を賭けてぶつかり合う。生きる者、そして死者の内面にも深く踏み込んだ孤高のハードボイルド大長編。
著者等紹介
北方謙三[キタカタケンゾウ]
1947年佐賀県唐津市生まれ。中央大学法学部卒。81年『弔鐘はるかなり』でデビュー。83年『眠りなき夜』で吉川英治文学新人賞を、85年『渇きの街』で日本推理作家協会賞を、91年『破軍の星』で柴田錬三郎賞を、2004年『楊家将』で吉川英治文学賞を、06年『水滸伝』(全19巻)で司馬遼太郎賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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琵音
5
みんな年を取っていっている。登場時の年齢設定の若かった登場人物は大人になっていくだけだが、登場時そこそこの年齢だったり、すでに相応の年配だった人々は犬も含めて老いが際立ってくる。とはいっても亀の甲よりトシの功。姫島の爺ちゃんと大変な目に遭ったはずなのに飄々とした沢村が格好いい。水村は藤木より気が優しいのかな、と思います。2013/01/04
しぇるぱ
4
富豪だが、かっては帝国海軍の軍医だった。戦友の息子が、つけねらわれて殺されそうになっている。部下に命じて、その息子を守ることにする。さて、このお話し、うんと遠くで語っているようで、まるで迫ってこないんですよ。ダシール・ハメット、レイモンド・チャンドラーなどのハードボイルド仕立てで、実に客観描写なんですよ。むちゃくちゃ遠い、体温が伝わってこない。きわめて読み易いが、巻頭の登場人物表と照合しないと、これは誰の台詞?どんな役割のひと?読み終わったあと、満足感、達成感は湧いてきません。2012/04/08
穀菜粗食人
3
北方謙三=ハードボイルド小説 と言うのがあった。初めて読んだ。いまひとつ よく分からないような・・・・ いけどもいけども つかみどころの無い展開に・・・ 半分過ぎてやっと うっすらと分かってきた。 思うに 齢80歳になる主人公の 私=会長さん 年齢の割にはなんとフットワークのいいことか。彼に従順な水村との主従関係も珍しい・・その彼が プラトニックな愛に目覚める。切ない。2013/06/16
ふっちゃん、男性60歳代(乱読書歴50年)→70歳になった。
2
S市に莫大な権力を持つ久納義正は、亡き戦友の息子を金で助けた。そしてその息子の命を狙う男が川中と判り、二人は命懸けの戦いとなる。 【4.0】2023/05/22
ツカモトカネユキ
2
シリーズ最終巻。今回の主人公は、御大、久納義正。シリーズを締めくくるにはぴったりです。常軌を逸した夫婦に御大と川中が振り回されます。街シリーズの主の予定のソルティは、最後までコマ扱いです。街シリーズは、ソルティの成長と久納一族の伝説の崩壊が主な流れです。最終巻では久納兄弟はいなくなり、象徴であった神前亭も出てきません。登場人物全員が常軌を逸しているので物語の内容はいまいち。締めの部分も余計でした。ブラディからの締めくくりとしては、残念な感じです。 登場人物それぞれのその後が気になるところが痕を惹きました。2019/01/29