内容説明
「ますます事件は奇怪だ。尋常ではないね」岩手県の雪深い村・鷲尻村。無医村の状態が続いていたこの村に、東京から待望の医師・滝本志門がやってきた。しかし、滝本の着任以後、村では謎の変死が立て続けに起こる。それは、殺害後の遺体を異様な形で人目に触れさせるという、前代未聞の連続猟奇殺人事件だった。この村が「首挽村」という不吉な名前で呼ばれる理由とは?村人すら忘れかけていた忌まわしい過去が、事件の真相を浮かび上がらせる―。第27回横溝正史ミステリ大賞大賞受賞作。
著者等紹介
大村友貴美[オオムラユキミ]
1965年岩手県生まれ。中央大学文学部卒。横溝正史と推理小説を心から愛する。2007年、『首挽村の殺人』で第27回横溝正史ミステリ大賞を受賞。現在、岩手県滝沢村在住(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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散文の詞
164
横溝正史大賞を受賞となっていたので、先入観があり、やはり、ちょっと見劣りする感じがします。 その点は、ちょっと可哀相ですね。 とはいえ、面白くないのかと言うとそうではありません。 田舎の因習なんかを絡めてそれなりに楽しく読めました。 また、熊が出てくるのですが、変な臨場感を与えていて、この点も面白かったです。 この熊も多少絡んできましが、取って付けた感じがしました。 最も残念なところは、犯人ですかね。これはどうなんでしょう? 2022/02/17
紅はこべ
116
2007年の横溝賞大賞受賞作が、2023年の連続熊害やOSO 18の出現を予言しているようとは。これが小説家の予見力か。明治の三毛別羆事件も参照にしているのかな。東北の過疎の村感は、作家ご本人の実感なんだろうか。岩手県は文学の地でもあり、スーパースターも生んでいるし。そこまで自虐しなくても。横溝賞にいかにも横溝的見立て設定で挑むとはなかなか度胸がおありだ。文章がちょっと硬い。人物の書き分けもイマイチかな。賞の審査員に坂東眞砂子さんのお名前を見て涙。2024/01/09
ALATA
82
横溝正史賞に誘われて。東北の雪深い村に派遣された滝本医師、着任早々巻き起こる人食い熊と連続殺人事件。おつかいさま、おきよの呪い、首挽橋、クマデの鎮魂碑、笹谷の白滝とおどろおどろしい過去の因習に囚われた道具立ては正に横溝調でワクワク感が満載でした。動機も犯人も意外な展開で面白かったのに終盤の謎解き部分が少しもったいない印象★3※やっぱり私としては金田一さんに登場してもらいたい。2024/05/22
オフィーリア
69
舞台はマタギ文化の色濃く残る限界集落。ここで集落に伝わる昔話になぞらえて起きる凄惨な連続殺人、とこれだけ聞けば横溝正史の雰囲気を強く感じさせる本格ミステリです。この作品が一味違うのは、本格ミステリに紛れて登場する熊さんʕ•ᴥ•ʔの存在。不気味な連続殺人の合間に現れてはミステリの真相など知ったことかとばかりに多大な被害をもたらし、特に真相とも関係無かった熊さんʕ•ᴥ•ʔに野生の恐ろしさを感じずにはいられませんでした。2022/03/14
とろこ
69
第27回横溝正史ミステリ大賞受賞作。舞台設定や殺害後の遺棄方法は「いかにも横溝」という雰囲気だった。東北岩手の過疎地域。無医村や少子高齢化社会、熊との関係性などてんこ盛り。それはそれでいいのだけれど、登場人物に魅力が感じられず残念だった。また、一連の事件が起きたのと、赤熊が冬眠もせずに人を襲いまくった時期が同じだということの必然性が弱いように感じた。真犯人の動機も幼稚で、過去の事件もこじつけ感があり、全体的に論理性に欠けていた。途中からは、ミステリーではなく、自然破壊への警告本だと思って読んだ。2018/08/23
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- 和書
- ソウ2 角川ホラー文庫