内容説明
両親の離婚後、月田姉妹は烏山のママの実家に引越し、十一年と数ヶ月、屈託なく暮らした。父親の不在を思ってふさぎ込むようなことは一度もなかった。そして応化九年の残酷な夏をむかえる。東から侵攻してきた武装勢力に、おじいちゃんとおばあちゃんとママを殺されたのだ。十四歳の姉妹は、偶然出会った脱走兵の佐々木海人の案内で、命からがら常陸市へ逃げ出した。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
キク
46
上巻は実直な少年カイトが中心だったが、下巻は自らを「邪悪な許しがたい異端」と名乗る双子の月田姉妹が中心。結成した女の子のマフィア「パンプキン・ガールズ」の唯一のテーゼは「お前が罪を犯すなら、私も罪を犯そう」その他にも「夢の時」を意味する娼婦を中心とした武装組織「ンガルンガニ」や、性的マイノリティの武装組織「虹の旗」が男性中心の軍隊相手にゲリラ戦を仕掛ける。戦争を軍事面だけでなく、外交、経済、信念の面からも描いて、とにかく読ませる。カイトと月田姉妹がとても魅力的で、戦争物だけど女性が呼んでも面白い小説です。2021/07/01
宇宙猫
21
★★★★ 月田姉妹が九竜シティで女の子の武装集団パンプキン・ガールズをつくり、シティの安定と利権を求めて闘争する。無茶なことをしてるけど、海人と違って思想や理念、欲望を理解して他の勢力と渡り合っていくのが面白かった。2023/06/10
さゆ
20
双子、桜子と椿子に視点が移る下巻。この双子の描き方が印象的。二人で一つの人格かのよう。描き方だけではなく、二人自身もそう言っている。「私たちは二人で一人」だと。常識的に考えれば、一卵性双生児で、遺伝的に考えればまったく同じ遺伝子だとしても、ここまで人格が融合することはないんじゃないかと思う。もしかしたら、このような世界に存在することが彼女達をそうさせたのかも。そして下巻の最後の数ページに驚いた。それで、これからどうなるの?と、今日は続編『愚者と愚者』を借りなきゃ!2011/02/20
月をみるもの
11
もし新しい元号が「応化」になったら、絶対に日本から脱出する。 https://bit.ly/2CJfYsu 2019/03/31
Ai
5
月島ツインズが武装勢力をぶちあげる痛快な話。九竜シティを舞台にした、武装勢力、マフィア、軍、NGO、カルト団体の離合集散は、カオスなスラムにぴったりだった。パンプキンガールズの暴れっぷりは、同性として共感できるが、暴力装置としての女子の在り方に虚しさも感じた。そして、なんだよあのラスト。うおー、早く『愚者と愚者』が読みたいぞ。2016/12/15