内容説明
最果ての地の、さらに外れにあるホテルビーナス。ここには、名前すらも無くしたい人々が、ひっそりと暮らしている。ドクター、ワイフ、ソーダ、ボウイ、僕、そしておかまのオーナー、ビーナス。ある日不思議な父娘がやってきた。寡黙な父、ガイ。心の回転をなくした娘、サイ。二人の出現で、ホテルビーナスに小さな嵐が起こる。そして、無回転だった僕たちの心が、ゆっくりと回り出した。数々のヒットCMのほか、CHEMISTRY、SMAPの作詞も手がけるCMプランナー、麻生哲朗の、小説デビュー作。
著者等紹介
麻生哲朗[アソウテツロウ]
1972年生まれ。CMプランナー。’96年に電通入社。’98年にTCC新人賞受賞他、数々の賞を受賞。1999年に電通から独立した4人の広告クリエイターで日本初の本格的クリエイティブ・エージェンシーTUGBOATを設立。サントリー「南アルプスの天然水」「なっちゃん」、キリンビバレッジ「アミノサプリ」、大塚製薬「カロリーメイト(がんばれワカゾー!)」などのCMを企画。また、作詞も手がけCHEMISTRY「PIECES OF A DREAM」「Point Of No Return」「YOUR NAME GONE」「アシタヘカエル」、SMAP「unposted letter」など、ヒット曲を次々と生み出している。『ホテルビーナス』が脚本家としてのデビュー作、また、『ビーナスブレンド』が小説としてのデビュー作になる
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感想・レビュー
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ミス レイン
3
10年ぶりに再読。相変わらず、読むとぼうぼうと風ばかりが吹きすぎる秋の野に、急速に鎮静化して澄んでいく感情だけを抱えて一人立ちつくしているような、それでいて寂しくない気持ちになる。それは舞台が心の回転が止まった人々が最後に行き着く街だからか、それでも登場人物たちが途方に暮れながらも灯し火のような小さな希望の存在を無意識化で信じているからだろうか。アネモネの花言葉は色で違うそうで、赤「君を愛す」、白「真実、希望、期待」、ピンク「待望」、青「あなたを信じて待つ」。サイに贈られた花の色は何色だったのだろう。2017/09/17
槐
1
居場所を無くした人々が集うカフェ・ビーナスで紡がれるささやかで優しい物語。 『大切なことは何一つ出来ないのに、結局いつも余計なことばかりしている』カンの想いに、今の自分もまさに其れだな、と笑ってしまった。良くも悪くも他人は他人、何もしなければ良いのに、なんだかんだと余計な事をしてしまうのは何でだろうな。弱さを隠すことが強さじゃない、けれど、弱さをひけらかす事も強さでは無いと思う。 じゃあ何だ、と考えるなら、認めて、受け入れて、ほんの少しでも前に進む事かなとは思う。→2014/09/15
Maccori
0
一年に数回は読み直す一冊。時間が止まったはずの町で描かれる描写一つ一つに音があってそれをより実感的に感じ取れるのが映画かなと思う。とても好きで人生で大切にしている物語のひとつです。2014/08/13
ユノ
0
映画を見たのはいつだったかな…ずいぶん前だったな。全体的なバランスはいいと思うよ。でも、やっぱり映画の方が重みがあったのは確か。最後のガイとサイのシーンは確実に映画の方が上だと思うし。あぁ、でもやっぱりこういう話が好きだから、甘い感想になってしまうなー2012/08/30
ひなた
0
■104p「アネモネの種は、風に乗ってどこまでも飛んでいくの。それってつまり遠いどこかで必ずまた咲こうとしてるってこと。」ソーダ ■136p「 略 都会にその人がいる役割みたいなものがあるとき、人は都会に暮らすの。だからその役割を終えたら、その人は都会に暮らしている理由はないのよ」リズ ■181p「寂しいときほど、人は明るく照らしたがる」182p「生きるってことは、嫌でも他人に囲まれるってことだ。略 胸を張るほど背中はきついさ。略 そんな背中に限って、必ず翼が生えてくるんだ。」ビーナス2012/05/01