内容説明
ゲームソフトの開発に携わる矢木沢は、ある日を境に激しい幻覚に苦しめられるようになる。どこからともなく魑魅魍魎の群れが現れ、矢木沢の周囲すべてを埋め尽くしてしまうのだ。しかも、その幻覚は回を重ねるごとに進化し、威力を増し、巨大な恐怖の濁流となって矢木沢を翻弄していく。鬼才・竹本健治が織りなす、目眩く戦慄世界。
著者等紹介
竹本健治[タケモトケンジ]
1954年、兵庫県生まれ。二十二歳のとき、雑誌「幻影城」に『匣の中の失楽』を連載し、作家デビュー
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感想・レビュー
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空猫
20
真壁岬再登場。やはり彼女は良いキャラクタ。こうした立ち位置を占める存在がいる物語がもっと読んでみたい。この本は日本国・日本人・日本語の特徴とルーツを比較文化学的なアプローチで語りつつ物語が進行するという高田崇史や鯨統一郎が同時期に展開していたものと同じ系統だが,そこに精神医学・脳科学が入るところが竹本健治らしさか。一応の解決はみたが,恐怖の根源などの解明はなされておらず,なんとなれば冒頭で開発されていたゲームとかそのシナリオは完成したのかとかも投げっぱなし。いろいろな意味で続編もしくは岬シリーズ継続希望。2017/11/02
烟々羅
6
初期作品「囲碁殺人事件」から「トランプ殺人事件」の主役のひとりである天野さんの名前をみかけて、竹本氏の著作のなかに読み落としがあったかと持ち帰った。読んでみたら再読だった。 たしか初読は、そのあと、倉阪鬼一郎氏の「文字禍の家」以下の文字禍メソッドを作品を多数読んだ時期で。脳内そちらに分類していたせいで気づかなかったのだろう。神話系のうんちくが、いつものように竹本氏の世間のはやりより5年早い傾向のせいで、当時は注目されず、いまでは陳腐とみなされるのが痛ましい2014/02/05
hirayama46
5
他作品から真壁岬・天野医師といったゲストキャラも参加する、倉阪鬼一郎作品にも通ずる文字サイコホラー。日本神話のエピソードもぎゅうぎゅうに盛り込んでいて、途中でかなりの長広舌も挟まったりもします。竹本健治作品はミステリでもそうなのですが、そのジャンルの構造・メカニズムの部分の考察に近い文章になるときがありますね。ホラー小説で考察的になると恐怖感としては薄れてしまう感もありますが、その硬質さが竹本健治らしさ、という印象です。2019/12/08
ありさと
2
言霊を軸に日本の神話、日本語、日本人論というあたりを扱う蘊蓄小説ではあるのだが伝奇的な要素と怪奇と狂気が綯い交ぜになって訳がわからないながらもひたすら筆力で読ませる異形の書。あるいは岬ちゃん萌え小説。読んだ!という満足感はある。2012/07/07
もぐもぐチョビたん
2
相もー変わらずー教科書ばりの長ーーーい説明文多いなー。今回のテーマは日本人のルーツと日本神話、日本語の特性や言霊についてなどですかね。ある程度の伏線放置は謎を余韻として残すためにいいかもしれないけどちょっとこの作品は解決しきれない謎が多すぎるかな…。そして発作を起こした時の文章、恐怖を煽る為なんだろうけどとても読みづらい。2011/06/14