内容説明
冴えない事務員とばかり思っていた20近くも年上の女に恋のトラブルを解決してもらった僕は、同じ日の夜、その女とほの暗い店の橙色の明かりの下で酒を飲んだ。昼間のもめ事についてくどくど詮索されることを恐れていると、女は放心したように、ほつりほつりと語りはじめた―。僕はすい込まれるように聞き入る、永くせつない彼女の恋の話に。都市の人々のこころを謳うストーリーテラー山本文緒、渾身の恋愛文学770枚誕生。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ベイマックス
101
主人公は美雨。離婚している。翻訳業だけでは生活出来ず、弁当屋でアルバイト。その弁当屋で芸能人兼小説家の創路と出会い、愛人となる。弁当屋を辞め、創路の事務所で運転手役として働くことに。その事務所には別の愛人。1人はアイドルとして売り出そうとしている子。そして、スナックのママの愛人、正妻などとの接触。不仲の両親に会いに実家にいくはなしもある。母との確執も語られる。◎中毒?こういう世界の人々ではありきたりなのでは?ストーリー展開としてはよくある内容。ただ、読みやすくはあった。2021/08/31
Nobu A
70
山本文緒著書2冊目。98年刊行。本書の分岐点「あんたなんか執行猶予中なんでしょう?」と久保陽子から水無月美雨への一言。それまで創路功二郎の愛人関係になるまで離婚した美雨の話が淡々とだが緻密に進行。その後、怒涛のように押し寄せ結末を迎える展開には息を呑む。計算された登場人物の面々。監視社会の現代、正義という名の元に有名人が浮気をすれば非難囂々だが、「芸の肥やし」だった昭和時代は本書のような人間関係や進展があったのだろうと思わせる見事な筆致。ストーカー心理にも感情移入してしまう。息継ぎさせてくれない読み応え。2024/10/24
ゆきち
66
鈴木保奈美さんがMCの『あの本、読みました?』で、大人の恋のおすすめ本として凪良ゆうさんが紹介していた本作。水無月の恋は既に相手のことを思いやることができなくなっている恋。恋というより執着?と、恋愛の沼を見せられた感じでした。読み進めている途中まで、水無月の恋愛は誰しもが陥る恋愛の溝くらいに感じていたのにびっくりしました。お互いを思い合える恋愛が幸せなのに、恋愛中毒に罹っているときって、自分でその異常な状態に気づいていながらも、相手が目の前からいなくなると飢餓状態になって強い不安に陥るのだろうな。怖いな。2024/07/05
misa*
66
久しぶりに恋愛ものを…と思って読んでみたものの、まぁドロっとしてて誰にも共感出来ず、ただただ一気読みでした。人間のドス黒い部分が丸見えでいて、だけどそれを押し隠しながらも誠実そうに生きてる姿に、なんかウンザリ。なのに気になって読み進めちゃうって感じ。実際面白かった!けど誰にも執着せず客観的にだけど。確かにタイトルの「恋愛中毒」って感じだなぁ。こういうの嫌いじゃない。2020/11/23
Satomi
60
もうやめよう…。分かってるのに止められない。恋は盲目。そして一途な思いは底なしに深まる狂気。いたって「普通」に思える女性の全く「普通じゃない」その愛情。ちょっとした嫌がらせで相手を追い詰めているはずが、結果として逃げ場がないほど自らが追い込まれていく。それに気付いていながら引き返せない…同じ過ちを度々繰り返す…中毒のように…これは恋愛小説じゃない。衝撃的なラスト!!ヤられた!!2015/04/16