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内容説明
時槻風乃は、知っている。この世界と全ての存在は、常に『痛み』という火によって、焼かれ続けている。幼い頃に火傷した時、火という物の本質は『痛み』であると学んだ。―火は『痛い』もの。そして、彼女に燻り続けていた『火』と『痛み』への思索は醸成され、一つの結論へと―。時槻雪乃のクラスメイトの古我翔花は、継母との確執により、いつも雪乃の家で泣いていた。死んだ母親の居場所を、形見の指輪を守りたいが、翔花は悔しさと悲しみに明け暮れて泣いていた。そんな時、ゴシックロリータに彩られた人形的な美しさを持つ風乃に出会い―。悪夢の短編連作型で贈る幻想新奇譚。
著者等紹介
甲田学人[コウダガクト]
1977年、岡山生まれ。津山市出身。二松学舎大学卒(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
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藤月はな(灯れ松明の火)
48
表題作は「雪の女王」誕生前の出来事。翔花ちゃんの父親が継母を叱った言葉にちぐはぐさを覚えていたら・・・。翔花ちゃんには辛く、あの二人には当然の結末を迎えてしまう。童話の父親役は「無能。節穴。見当違い」という役どころが多いのは夫権性の幻想の脆さを突き付けるからかなと思わずにいられない。そして風乃ちゃんも雪乃ちゃんも別ベクトルだけど、繊細で優しい姉妹だなとしみじみしてしまう。個人的に「アリとキリギリス」が怖かった。男子のあけすけな嫌悪感の吐露も居た堪れないし、有賀が桐生に非通知で電話を掛けた事は余りにも悪質だ2021/07/10
まりも
46
イソップ童話が題材の短編集。今回はグロいと言うよりも怖いといった感じでしょうか。全ての事件に人間の負の感情が関わってくるからかかなり重たい話ばかり。一幅の清涼剤はきれいな雪乃と生前の風乃が登場する位でしょうか。雪乃はやっぱり良い娘やったんや。まぁ猫ちゃん解体ショーは相変わらずリアルできつかったんですが。本編よりも小さいとは言え、どの話も十分悲劇ですね。またいつかきれいな雪乃を読みたいものです。2015/01/18
坂城 弥生
41
短編集。風乃の話で彼女にも葛藤があったんだなぁと思った。2022/03/14
Yobata
35
断章短編集。水から白い手が生え持っている剃刀で襲ってくる…「よくばりな犬」。恋に生きた少女に勉学方面で真面目に生きて恋に破れ自殺した友人の霊が現れる…「アリとキリギリス」。継母に亡くなった実母との思い出を穢されることへの戦いをする少女と風乃との出会い…「金の卵をうむめんどり」のイソップ寓話を題材とした短編3本。本編のような夢見子が予言する大きな泡禍ではなく、普通に遭遇する規模…に収まってるらしいがこれと比較すると本編はどれだけ悲劇的なんだろうwだからと言って悲劇な訳じゃないのが断章のグリムらしい。てか→2014/06/26
そのぼん
22
今回は短編集だったんですね。粒揃いで、面白かったです。表題作もよかったけど、正反対の少女二人がメインの『アリとキリギリス』もなかなかよかったです。痛々しさは短編集でも変わりませんでした。2013/07/26