ある島の可能性

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  • サイズ B6判/ページ数 430p/高さ 20cm
  • 商品コード 9784047915435
  • NDC分類 953
  • Cコード C0097

内容説明

物語は世界の終わりから始まる。喜びも、恐れも、快楽も失った人類は、ネオ・ヒューマンと呼ばれる永遠に生まれ変われる肉体を得た。過去への手がかりは祖先たちが残した人生記。ここに一人の男のそれがある。成功を手にしながら、老いに震え、女たちのなかに仔犬のように身をすくめ、愛を求めつづけたダニエル。その心の軌跡を、彼の末裔たちは辿り、夢見る。あらたな未来の到来を。命が解き放たれる日を。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

どんぐり

82
ネオ・ヒューマンと呼ばれる永遠に生まれ変わる肉体を得た人類。そして嫉妬、性欲、生殖欲、存在する苦しみから解放された未来。我々の住む「闘争領域の拡大社会」において、主人公のダニエルは、金とセックスの両方で勝利した強者であった。しかしながら、年齢的にはもはや若くはない、生物学的な老いを迎えている。25歳年下のエステルの愛を失うまいと抗い、「若い肉体は、この世界が生み出してきたもののなかで、唯一魅力的な存在であり、それを利用できるのは、若者だけ」という苦渋と恥辱を味わう。ウエルベックの下半身小説が濃厚だが、これ2015/09/27

たーぼー

56
『ランサローテ島』を読んでウエルベックには愛と性と生への希望が欠如していると感じていたのだが本書によって、その考えは恥ずべきものとわかった。ここに記されたものは見事な戦慄を覚えるまでの探求ではないか。凡庸な日常にしがみつき、かつ苦しみのために存在する現人類。しかしその中で愛も見出せる。一方、無機質で死を失った未来に対する嫌悪感はあるが進化した価値観の可能性も信じたい。現在と未来。人が全力をもって人を愛することができる究極の形はどこにあるのだろう?永遠の課題への痛烈な言及。まさしく現在に甦るバルザックだ。2015/06/09

zirou1984

50
つらい。ウェルベックというのは皆がキャッキャウフフと雪合戦を楽しんでる中1人鉛入りの玉を無言かつ全力で投げ付けてくる様な、身も蓋もなさが本当に凄まじい作家だ。高度資本主義と科学技術と現代宗教、生と性への欲望三点締めのアングルから描かれるダニエルの生き様は未来からの注釈で一層悲哀を増し、誰もが老いと死から逃れられない現実を無慈悲なまでに突き付ける。人間とは所詮粘液に塗れ朽ちるだけの生物なのだろうか。否、それでも人は愛や美を求めようとする。それは愚かさなのかもしれないが、ウェルベックは決して否定しなかった。2014/02/25

白のヒメ

34
久しぶりに小説の読後「うーん」と唸ってしまった。果たして人間は肉体の存在なのか、精神の存在なのか。「不死」をクローン人間で叶える検証を通して描かれるSF小説。内容はリアルで、そして非常に宗教的でもあり、深く考えさせられる。そして導き出された「人間は肉体に偏った存在である」という結論。しかしそれは不死ではないという限定付きにまあまあ同感。じゃなきゃ、誰も人間生まれてくるのをやめますがな。しかし、主人公であるネオヒューマンのダニエルの迎えるエンディングにゾッと背筋の寒気が止まらず。なかなか面白い本でした。2017/11/14

おりん

31
面白かった。良作。今まで読んだ著者の本の中で一番良かった。人間が獣であることを辞めて次の段階へ進歩するとしたらどうなるか、を描いた作品。相変わらずの露骨な性描写でげんなりする部分もありますが、滅びかけた世界の情景描写が美しく、特にラストシーンは情景が目に浮かぶようで良かった。人間の嫌な面、資本主義社会の嫌な面を直視していて、クールです。獣でありながら理性をも持つ我々の苦悩はこの先も当分の間続くのでしょうね。作中のようなネオヒューマンに進歩できる日は来るのでしょうか。2018/10/06

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