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出版社内容情報
一切の人間的な営みから隔離され、育てられた少年が突然文明社会の中に投げ込まれたとき…。19世紀初頭の実在の人物をモデルとした、ノーベル文学賞作家ハントケによる“言葉の拷問劇”とも呼ばれる衝撃作。日本公演にあわせ、約40年ぶりに新訳刊行。
内容説明
19世紀初頭の実在の人物カスパー・ハウザーを、現代を生きる孤独な個人としてよみがえらせた比類のない衝撃的“言葉の拷問劇”。40年ぶりとなる新訳完成!
著者等紹介
ハントケ,ペーター[ハントケ,ペーター] [Handke,Peter]
1942年オーストリア、ケルンテン州生まれ。オーストリアを代表する作家、劇作家、映画脚本家。大学在学中に発表した小説『雀蜂』と戯曲『観客罵倒』で衝撃的なデビューをとげる。2019年にノーベル文学賞を受賞
池田信雄[イケダノブオ]
1947年東京生まれ。ドイツ文学者(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Mark.jr
4
「戯曲『カスパー』は、カスパー・ハウザーの身にほんとうに起こること、ないしほんとうに起こったことの次第をお見せすることはしない。この戯曲がお見せするのは、だれかの身に何が起こりうるかである。これがお見せするのは、だれかが話すことを強要される次第なのだ。この戯曲は「言語拷問」と題してもいいだろう。」 少なからず戯曲は読んだつもりでしたが、ここまでこれは芝居か?と疑問を抱いた本は初めてです(パフォーマンスアートのシナリオと言えばそうですが)。しかし、これを25歳程度の若さで書いた著者の才気に驚くばかりです。2024/07/01
uburoi
2
無意味な言葉ひとつだけ覚えて世の中に出てきたカスパーが言葉の意味を取得していくのが、やがて6人に分裂することでカオスの中に没入してしまう。カスパーの16段階というハントケが提示してくれたテキストは劇の内容をますます混乱に貶めるかのようだ。これほどまでに抽象化されていながら劇的でもあるテクストは奇跡とも思える。現代劇の最高峰だし、ある意味で『ゴドー』や『マラー/サド』より感動が深い。カスパーを女優が演じるのもいいだろうし、演出も自在である。2023/06/22
葛
2
著者:ペーター・ハントケ 訳者:池田信雄 2023年4月10日初版第1刷印刷 2023年4月20日初版第1刷発行 発行者:森下紀夫 発行所:論創社 装幀:奥定泰之 組版:加藤靖司 印刷・製本:中央精版印刷 定価:本体1800円+税 題字:下田昌克2023/06/11
なつこうへい
1
評判になっていたので…。戯曲。難解。2023/06/04
Э0!P!
0
主人公はドイツ人の大好きなカスパー・ハウザーである。私の彼との最初の出会いは、ヴェルナー・ヘルツォーク版である。言葉を全く持たない謎の少年が、たった一つの文から、痛みを伴いながら(かつ痛みを和らげながら)、反復、分解、変性、展開を経て、破壊と秩序と混沌を舞台上にもたらす。言葉を知らなかった頃にはもう戻れない、巻き戻しの効かない進歩には達成感や利便さでは癒すことのできない哀愁がある。2023/08/27