内容説明
1996年1月21日、深夜のラジオが横山やすしの死を伝えた。それを聞いて著者は数年前にかかってきた彼からの電話を思い出す…。80年に芸術祭優秀賞を受賞、漫才ブームの頂点に立った「漫才道」の求道者、横山やすし。一方で不祥事が絶えず、謹慎を繰り返すやっさん。自暴自棄の中で自滅した彼の芸と人を描く。
目次
無名の二人
「漫才のために生れた少年」
1974 秋
漫才史の中のやすし
色川武大のいる風景
対面まで
映画化をめぐる憂鬱
のるかそるか
やっさん
1982 秋
嗚咽
不安
禁煙スタジオ
「漫才が下手になる…」
有頂天のとき
不意の告白
胎児殺し
ピーク時を過ぎて
1986 夏
偽善と偽悪
酒をめぐって
甘え
バラは贈らんでくれ
謎の事件
突然の死
やっさんのいない大阪
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
山田太郎
52
熱心なロッキングオン読者だった私としては松村雄策とけんかしてたおっちゃんのイメージが抜けない作者でなんかいまいちイメージよくなかったんだけど、やっぱりこの上から目線はいまいち好きになれません。紳士同盟くらいは読んでみようか思いつつ悩む。テレビスクランブルで久米宏にいじられてるのはおもしろかったことを思い出す。あとメガネメガネってやつ。2014/12/04
メタボン
30
☆☆☆★ 51歳の死というのがあまりにも早すぎる。生き急いだとしか思えないやっさん。リアルタイムではあまり見ていなかったが、きっとやす・きよは、昭和の空気感を体現している最後の漫才師だったのだろう。そういえば当時は「コンプライアンス」という言葉も浸透していなかったな。2021/04/09
あんPAPA
22
今でこそ大阪は小洒落た観光都市に進化した(ある意味成り下がった)が、30年以上前は大変カオスな街であった。そのカオスを体現する自滅型芸人とされる横山やすし氏の評伝である。著者は有名な小説家・評論家らしいが作品は初読みであった。しかし文章にクセがあり、表現にも悪意が感じられ読み辛かった。相方西川きよし氏の政界への進出は、コンビ解消の為の方策であったというのは当時は考えた事も無かったが、経緯を追って説明されるとそうなのかもしれないと感じられた。心身共にボロボロになった挙句に亡くなった方なので読後感は良くない。2022/12/05
ミノムシlove
20
やすしきよしには大笑いさせて貰った世代。別格に面白かった(ゆえに『ザ・漫才』は全く面白さを感じなかった)。確かに二人とも若かった。そこで頂点に立ってしまった以上あとは下るしかなかったのだろう。円熟味を増すコンビもいるが、それにはやすしの“不在期間”が多すぎた。生活のかかるきよしさんが見切りをつけたとしても誰が責められよう。リアルタイムで絶頂時代から凋落を知っているのでやりきれない。まだ現役の頃に、家族との日々を追うドキュメンタリーで、「お父ちゃん仕事行かんといて。」と泣く幼い娘さんに向かってやすしが→ 2024/07/22
サーフ
18
横山やすしの評伝。タイトルには「天才伝説」とあるが、本文のテンションは冷静にそして批判的に横山やすしという人物が描かれている。作者の執筆した作品の映画で横山やすしが主演を努めたという点から作者しかしらないような「横山やすし像」も言及している。パブリックイメージとしての破滅的な横山やすしの印象がとても強いが、この作品を読むと生い立ちといった影の部分、人間的な弱さも垣間見えた。2019/01/26