内容説明
果てしない孤独が、小さな幸せで包まれる一瞬の優しさ。ミノタウロス―雄牛の上半身と人間の下半身をもち、悠久の時を生きてきた醜い怪物が、この世界で生きている。愛称〈M〉で親しまれ、ステーキ・ハウスでコック見習いとして働きながら、分厚い唇をぎこちなく動かし、「ウンンフ」と眩く。住居はトレーラー・ハウス。愛車〈ヴェガ〉の小さな車内で暮らす、ささやかな毎日。そんな彼に、かつてない変化の予感が訪れる。新しい出会い。白昼夢の悲劇。茫漠とした不安と期待が渦巻く中、待っているのは、前途明るい幸せな未来?それとも永遠にひとりぼっちの怪物的な人生…。「尋常ならざる才能の開花」と全米各紙で絶賛を受けた処女小説。2000年度ピュリッツァー賞フィクション部門及びナショナル・ブック・アワードにノミネート。
著者等紹介
シェリル,スティーヴン[シェリル,スティーヴン][Sherrill,Steven]
41歳にして処女小説となる『夢見るミノタウロス』を発表。ニューヨークタイムズ、シカゴトリビューンなど大手各紙で絶賛され、世界9か国で翻訳が決定。一躍注目の作家となる。2004年に発表した次作『Visits From the Drowned Girl』はすでに2005年のピュリッツァー賞フィクション部門にノミネートされている。ペンシルヴァニア州アルツーナで創作ライティングと統合芸術のクラスを教えている
峯村利哉[ミネムラトシヤ]
1965年多摩生まれ
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
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seimiya
8
神話上の生き物ミノタウロスが現代に生きている。「M」と呼ばれ、ステーキハウスでコック見習いとして働いている。異形の生き物として人間の中で生きる「孤独」と「しんどさ」が溢れていた。人間にも獣にもなりきれない。心も体も引き裂かれているようで、とてもしんどい。侮辱する人間のことなんか食い殺してしまえばいいのに、ミノタウロスはそうしない。物事を投げ出さずに、やけにならずに、毎日をちゃんと生きる。p212 「神話の登場人物であろうがなかろうが、他のみんなと同様、ミノタウロスの人生も不調和と不合理に満ちている」 2015/05/05
猪子
7
某スマホゲームのアステリオス(ミノタウロスの本名)が死ぬほど可愛かったので図書館にて検索!表紙とタイトルからしてファンタジー的な内容を想像していたけど、全くもって逆!ノースカロライナ州の田舎で暮らすミノタウロスはかつての凶暴さは持ち合わせず、コックとして働き、悩んで恋をして時としてからかわれる。話し方もあんまり上手じゃないのに「ぼく、おっぱいせいじん」の発音は明瞭。最後はぽやーっと終わるけど、多分ハッピーエンドを迎える、と思いたい。B級になっちゃいそうだけど、映像化しても面白そうだと思った。2016/01/29
サーモン好き
2
モーモーとか。モーモー。人と交わって暮らしている神話の住民達の日常..カバーイラストが可愛くて手にとったらなかなか大人な内容でした。2017/01/11
syachi
2
テセウスがへたれでそれから5000年近く生きて、今やダイナーのコックをしているミノタウロスの日常。発声が苦手だったり角がかなりアグレッシブだったりで大変なんだけど、それでも気になる人ができたりして頑張ってますといった感じ。騙されやすいあの人はこの先大丈夫なんかね?2013/11/30
つゆり
1
かわいらしい表紙に負けないくらいl主人公のミノタウロスは愛嬌があってどこか憎めない感じ。淡々と話は進むけれど、永遠を生きるミノタウロスの日常の小さくて大きい事件が書かれていて、じんわりと心にくる。2017/09/27
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