内容説明
戦場で勝利し、戦場で勝利し続け、しかし帝国は破滅へ一直線。爛れ切った愛国心と、残酷な現実の抱擁を経てゼートゥーアは「世界の敵」たるべく舞台を作り上げていく。死に逃げることも出来ない参謀本部の責任者としてゼートゥーアが求めるのは『最良の敗北』なのだ。言葉よりも、理性よりも、ただ、衝撃を世界に。世界よ、刮目せよ、恐怖せよ、そして神話に安住せよ。我こそは、諸悪の根源なり。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
RASCAL
26
なるほどなー、そういうことか。ゼートゥーア大将の作戦、予想以上でした。目的を持たなかった帝国の戦争も、この終盤にきて、よりマシな敗戦という明確な目的を持ち始めたということか。ターニャは、現場力に優れた中間管理職の悲哀ですね。さて1年ぶりの12巻でも終わらなかった本編、何時続きを読めるのだろうか。2020/03/05
SIN EIM
25
【世界の敵】自ら悪となることを決意したゼートゥーア。宣戦布告したとはいえ、もと同盟だった国の民衆を盾とする戦略を行う。見た目は帝国ではなく、諸国の責任に見えるからゼートゥーアの悪辣さが証明されるのはかなり後世、ペンの力によって子々孫々と語られることになるだろう。現実のドイツの歴史認識では、ナチス党とドイツを分けて考えることがあるという。国家・国民の総意ではなく、ナチス党を政治が制御できなかった。だから、悲劇が起こったという解釈。勝手な予想だが、ゼートゥーアがナチス党の役割を引き受けることになるのだろうか?2025/04/05
鐵太郎
18
作者の描く戦略思想がイマイチ納得できないまま、刊行された紙本としては最終巻へ。その戦略というのは、参謀本部のナンバーツーであり国家の首班でも何でもない「恐るべき」ゼートゥーア大将が独断で行ったもので、中立国イルドアが対帝国戦略を見据えて合州国と同盟を結んだことを契機としてイルドアに奇襲攻撃をしかけ、北半分を占領して首都を墜とすというもの。この戦略について説明は長々と何度もされているけれど、いろいろな点でどうも合理的に納得できません。とはいえそのせいでゼ大将が主人公になって幼女の影が薄いのが残念。(笑) 2023/07/21
ささきち
16
ゼートゥーアが敗北を受け入れた上で、ただでは死なんと決意を固めた話。負けるとしても最低限の負けを、勝つ相手すらもちゃんと選び、共産主義共には絶対に一人勝ちはさせん!と動き出した彼には倫理観というか人間性がアレしちまっており・・・素敵なおじさまになりましたね。そんな彼の考えに応えなきゃいけないのが、有能な部下であるターニャちゃん!どこがと言うと全てが可愛そうなんだけど、挿絵の彼女がまぁ素敵なんだわwイルドアから物資を貰い、代わりに勝利と足かせをプレゼント。手に入れた物資をどう活かすのか、続きが楽しみです。2021/03/30
さとうはるみ
12
帝国は明らかに弱者であり追い詰められている。イルドア王都にてやった作戦は褒められたものでは無い。が、ただでさえ脆い補給線に数百万人の人達の食糧を賄えは無茶である。補給しっかりな合衆国でさえ大変になるくらいなのだ。攻め込みたくても補給が絶望的になってきている連合軍は足踏み状態。それにしても印象とは恐ろしい。合衆国が来てから自分たちはこんなにひもじくなったとイルドア国民に認識されてしまう。そんな時にさらに勝手に同僚を引きずり込んで独断専行で帝国軍を追い払い堂々と合衆国旗をかかげるメアリー・スー中尉。2024/02/29