内容説明
「北条早雲」の名で知られる後北条氏の初代・伊勢宗瑞は、「戦国大名の魁」「下剋上の典型」「大器晩成の典型」などと評されてきた。しかし近年、新史料の発見により京都や東海、関東における政治状況についての解明が進展し、その人物像は大きく書き換えられた。北条氏研究の第一人者が、最新の研究成果をもとに、新しい政治権力となる「戦国大名」がいかにして構築されたのかを明らかにしつつ、伊勢宗瑞の全体像を描く初の本格評伝。
目次
第1章 伊勢宗瑞の登場
第2章 伊豆経略の展開
第3章 伊豆国主になる
第4章 相模への進出
第5章 両上杉家への敵対へ
第6章 相模の領国化
第7章 政治改革の推進
著者等紹介
黒田基樹[クロダモトキ]
1965年東京生まれ。早稲田大学教育学部社会科地理歴史専修卒業。博士(日本史学)。専門は日本中世史。駿河台大学教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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えちぜんや よーた
92
日本中世史の素人が読むにはかなり難しい。図書館の貸出期間では人名が把握しきれない。ただ京都にあった足利将軍家の権威によって保証された所領は、15世紀後半から己の才覚で切り取って治めることが一般化していたことは理解できた。一般化とは守護大名から戦国大名にとってかわって領国を支配する時代への変化をさす。伊勢宗瑞は今で言うところの「北条早雲」のこと。「伊勢」と言う名前は幕府官僚時代からの名前で、その頃からの史料に基づいて本を書いているようなので本のタイトルは「伊勢宗瑞」の方が正確だと思う。2019/10/31
鯖
26
北条早雲ではなく、伊勢宗瑞の名でこの本が世に出たことにまず昔日の観。黒田先生はじめ、諸先生方の研究の賜物です本当にありがとうございます。松田氏をはじめとした家臣の出自や三浦道寸との抗争についての記述が面白かった。推定されるとか、これからの研究をまつといった記述も多いけど、数年後黒田先生なら増補改訂版をきっと出してくださるはず…。その頃までには戦国大名北条氏綱、氏康、氏政、氏直と御館様5人分の本が出てるはず…。戦国武将総選挙でもベストテン入りを果たしてるはず…。あの番組、氏康パパはいったい何位だったのさ。2020/01/05
kk
23
戦国大名のさきがけ、北条早雲の評伝。司馬遼太郎の小説の影響でか、早雲ってお爺さんになってから伊豆に行ったもんだとばかり思ってたけど、そうじゃなかったみたいね。知らんかったわ。それにしても、この時代の関東はほんと大変。みんないつも喧嘩ばっか。離合集散もハンパない。負けても、わりとまたすぐに立ち直って暴れ出すから、いつまで経っても落ち着かない。この時代に生きた皆さん、ほんとにお疲れさまです。そう考えると、曲がりなりにも安定と秩序を回復させた後北条氏って、やっぱりちょっと大したもんだね。2019/12/11
楽
22
19年。平山優『武田氏滅亡』もそうだったが、角川選書は読み応えがある。本書は大河『真田丸』の時代考証を担当した一人であり、北条氏研究の第一人者による伊勢宗瑞(「北条早雲」と名乗った記録はない)の評伝。妹(実際は姉らしい)が今川氏に嫁いでいる時点で一介の素浪人説は疑問だったが、現在では幕府の政所執事を務めた伊勢氏の一族とする説が主流である。生年も1432年から1456年に下り(夢の話の元となった子年生まれは変わらず)、駿河下向も中央政治との連動となると、司馬『箱根の坂』などで抱いた印象はかなり変わるだろう。2020/02/01
nagoyan
20
優。伊勢宗瑞(北条早雲)は戦国大名そして下克上の嚆矢とされる通説を、関東戦国史の一人者である著者が丹念に覆していく。伊勢宗瑞は京都幕府の意向を受けて、今川氏の内紛に介入し、その後も京都政界(政元など)との強い結びつきを背景に今川氏の一族として関東政策に携わっていく。しかし、足利茶々丸、両上杉との抗争を続けるうちに伊豆諸島支配に見られるように地域権力としての独自の論理が優先していく。相模一国を支配する頃には、上杉氏に代わって関東の秩序を打ち立てようとする構想が見られる。しかし、氏綱、氏康の代で漸く実現する。2021/07/17