出版社内容情報
早世した文武天皇の嫡子として、満を持して即位した聖武天皇。天武・持統朝の再現が期待されたその治世は、最初こそ華やかであったが、長屋王の変、大地震、天然痘流行を経て混迷に陥っていく。暗黒時代への転落を『万葉集』は口ごもりがちに物語る。一首一首の歌の意味を味わうだけでなく、一続きの歌集として歌々がどう組織され、連関させられているかを読み解けば、驚くべき仕掛けが浮かび上がる。千二百年を超えて明らかになる、万葉人のメッセージとは。
【目次】
序章 巻六の前奏としての巻一・巻二
第一章 神亀年間を彩る行幸従駕歌群
第二章 長屋王謀殺 天平元年の空白と沈黙の批評
補説 大伴旅人のまなざし
第三章 崩れゆく栄え 疫病襲来と天平六~九年の編成
第四章 放棄された平城京 天平十二年の東国巡幸と恭仁遷都
第五章 暗黒時代への転落 度重なる遷都と皇嗣の不在
跋章 巻六を継ぐ家持歌日誌
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
Go Extreme
1
聖武天皇の暗黒時代 長屋王謀殺の沈黙 万葉集の意図的編成 神亀年間の華やかさ 疫病による国家危機 平城京の放棄 度重なる遷都の混乱 万葉人の歴史記憶 テクストの動的理解 行幸従駕歌群 空白と沈黙の批評 大伴旅人のまなざし 天然痘流行の編成反映 恭仁遷都の政治的失敗 暗黒時代への転落 皇嗣不在の不安定性 大伴家持の歌日誌 越中国守の記憶伝承 歴史的現実の言語化 選別・配置・組織化 千二百年を超えた思考 読みの行為の影響 複雑な権力関係 故郷喪失の悲しみ 古典の静的捉え方からの脱却 歴史と言語表現の相互作用2025/12/02
ぽん
0
万葉集巻六をメインとした読解で、歴史や編纂過程よりもテキストそのものに則した読みを重視する。天平7年の空白についての指摘など、この人が言わなかったら絶対気づかなかっただろうなって思う。/和歌の引用の際に句読点も添えているのが初めてで、こんな風に和歌に句読点をつけてもいいんだって思った。2025/12/07




