出版社内容情報
甥の公暁に暗殺された悲劇の鎌倉三代将軍・実朝。その実朝はなにを信じ、発信して、どう行動したか。それらを『金槐和歌集』『吾妻鏡』『愚管抄』などによって詳細に跡づけ、歴史背景とともに実像を明らかにする。
内容説明
近代以降、実朝はもっぱら和歌の面で高く評されたが、実朝は歌人として生きたわけではなかった。鎌倉幕府の若き三代将軍、関東の長者としていかに政治に臨み、内紛に対処し、熊野詣にならった箱根権現・伊豆山権現の二所詣を行い、仏道にいそしみ、和歌創作に励んだのか。これらを『金槐和歌集』『吾妻鏡』『愚管抄』などによって跡づけ、鴨長明、栄西らからの影響関係も含めてその全体像を詳細に検証。実朝の肉声と史実に迫る。
目次
1 東国の王(和歌から実朝を探る;将軍にいたるまで;将軍実朝の成長)
2 王の歌(試練を乗り越え;和歌を詠む喜び;実朝の徳政)
3 歌から身体へ(慈悲と無常;和田合戦;合戦の影響)
4 王の身体(再起を期して;家名をあげるべく;主なき宿となりぬとも)
著者等紹介
五味文彦[ゴミフミヒコ]
1946年生まれ。放送大学教授、東京大学名誉教授。東京大学文学部教授を経て現職。日本中世史専攻。2004年に『書物の中世史』で第26回角川源義賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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六点
98
『金槐和歌集』を残し、暗殺された事で有名な源家第三代将軍。その、時代に和歌から迫った歴史書である。通読して紙面から立ち上るのは「王たらんと欲すれど王たらず」という姿であった。文化面から都鄙一体を図らんとすれば、周囲の武士は面白からずと、官位を追求すれば、やっかまれると、難儀極まりない人生である。惨殺された兄の遺児は、宗教界に放り込み、一応の解決をと、思いきや、最終的に若いおじの命を奪うわけである。使嗾したのは、誰かとは敢えて突っ込まない著者の姿勢には同意する他なし。カジュアルに殺害される王の身体に涙せよ。2022/05/24
BIN
10
金槐和歌集を残すほどの和歌に傾倒した鎌倉幕府三代将軍源実朝。前半はかなり前に読んだので忘れているが、副題の身体というところがよくわからない。蹴鞠も好きだったみたいです。坂東武士の醜い争いに辟易としただろうし、親族の北条氏(母親含め)も癖がありすぎて辟易しただろうなあと同情します。それなりに有能そうなので、頼朝が死なず、壮年になってから将軍になっていれば、源の幕府としての基礎が作れたかもしれない。本書は歌が多めですが、歌に関する解説とかはほぼないです。2022/06/16
氷柱
7
863作目。6月4日から。タイムリーな作品。これから大河で映される部分について細かく描写されている。特に義時と政子の陰の立役者っぷりが如実に描かれる。この中からどれだけが映像化されるかはわからないが、どの部分を取り上げてみても事実を追うだけでもう面白い。人物関係が複雑に絡み合うことで歴史が紡がれていく。これだけの政治劇を三谷さんの力でどれだけ立体的なものに仕上げてくれるのか、乞うご期待である。2022/06/05
ようはん
3
源実朝というと歌人としては一流の人物であるものの将軍としては凡庸なイメージが強かった。しかし当書を読んで確かに和歌等の傾倒はあったが将軍としての職務にも熱心に励んでいた人物であったと感じた。むしろ海千山千の荒くれ鎌倉武士達を多数相手にする事自体かなりの胆力が必要な訳でそれをこなしていた時点で立派な気が。2019/03/30
9
2
頼朝は好きなので大まかにその周辺を把握してるけど、その後をよく知らないなと思ううちに実朝自身とその歌に興味が出て購入。ざっくりと彼のことが分かったけど、歌に関してはどうにも私自身が知識不足で完全に理解できるまでには至れなかった。歌の解説もうちょっと欲しかった。大陸に渡りたい実朝、めっちゃおもろいな。最後の章、本当にあっさり亡くなってしまって、色々あって時間かけて読んでたのでかなり虚無感を味わってしまった。あれはもう仕組まれていたのかなあ。だとしたら悲しい。2023/03/13
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