内容説明
洋の東西を超える人類共通の智慧を求めた仏教学者、中村元。碩学がたどりついた仏教の核心とは?ヴェーダーンタ哲学の歴史を解明する6000枚の博士論文。『東洋人の思惟方法』の刊行と毀誉褒貶の嵐。念願の地・インドへの旅と原始仏教の独創的研究―。アカデミズムを超えて「人間ブッダ」の魅力を説き、多くの人に慕われた人柄と円熟期の思想、そして弛まざる学究の生涯をつらぬく“普遍思想史への夢”を鮮やかに描く。
目次
生い立ちと学問への目覚め
東京帝大入学から博士論文の完成まで
『東洋人の思惟方法』で世界へ
念願のインドの大地へ
原始仏教の研究に見る中村の独創性
『佛教語大辞典』と「中村元選集」の刊行
「比較思想」の提唱
東方研究会・東方学院にかける理想
中村元と足利学校
研究の集大成
中村元の遺志の継承
この夫人ありて、中村元あり
著者等紹介
植木雅俊[ウエキマサトシ]
1951年、長崎県生まれ。仏教思想研究家。NHK文化センター講師、東京工業大学世界文明センター非常勤講師を歴任。九州大学大学院理学研究科修士課程修了、東洋大学大学院文学研究科博士後期課程中退。91年より東方学院において中村元氏のもとでインド思想・仏教思想、サンスクリット語を学ぶ。2002年、お茶の水女子大学で人文科学博士号取得。『梵漢和対照・現代語訳法華経』上下(岩波書店)で毎日出版文化賞、『梵漢和対照・現代語訳維摩経』(同)でパピルス賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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白義
21
原稿用紙5000枚以上の博士論文をリアカーで大学に持ち込み、3000年に渡る初期ヴェーンダーンタ哲学史を再構成する。その業績で通常70、80代になってからもらうのが通例の文学博士号を僅か30歳で取得。学者人生のスタートからしてスケールが違いすぎる。しかもこれはその圧巻の研究の、僅か一部に過ぎないと来た。碩学とか権威とか大学者とか、そういう言葉がかえって恥ずかしくなるようなこの超弩級の仏教学者をお弟子さんが情感たっぷりに語った伝記。その傑出した人格も含め、人文学問の学者の一つの理想、究極を体現したような人物2017/10/26
ステビア
14
中村元先生の伝記だ。途轍もない人だったんだなぁと再確認。2015/06/18
パブロ
14
「仏教の入門書を読もう」と思ったら、必ずこの中村元の洗礼を受けずには通れない。でも、そういえば中村元のことを何にも知らなかったよな〜。ってなわけで、スゲ〜なこの人。サンスクリット語、パーリ語、チベット語からギリシャ語などに堪能で、著書が1400点以上。おまけに人格者って超人じゃん! 師弟愛に溢れた文章はちょっと暑苦しいときがあるけど、中村元の人柄と業績をきっちりと描き出している。それにしても、同時代のこれまた同じ天才・井筒俊彦とは何で交流がなかったんだろう。テーマもかぶっているのに。それがちょっと不思議。2015/03/19
伏木
2
中村さんの弟子に対する態度は、お釈迦様の教えに従ったものだと書かれていた。慈悲をもって人に接する態度は、”本当の仏教徒”であったと思う。その一生は、仏教徒としての一生であったと思う。論文など、1480余とある、月に2,3本の論文を書いていたことになる。 少しでも前に進めたいという気持ちがすごい。 驚嘆し、感動し、感謝する2019/12/24
はちめ
2
読みながら少し思ったのは、井筒俊彦との間に交流はあったのだろうか。イスラムの主軸を置いていた井筒と少し違うところもあるが、大乗起信論などへの関心においては共通している。ただし、文章のスタイルにおいては相当異なっているが。学会等において面識がなかったとは考えられないが、実際のところどうだったんだろう。2018/05/27