出版社内容情報
帝国・唐の重臣閣僚となった阿倍仲麻呂。その非凡な才は新生国家としての日本を体現する知そのものだった──。仲麻呂の生涯を貫く夢と、ただ一首だけ残された歌「天の原」の謎を、日唐交流史を背景に鮮やかに描く!
内容説明
日本を旅立ち、大帝国・唐の重臣閣僚となった男、阿倍仲麻呂。科挙を突破し、希有の昇進を遂げた非凡な才は、新生国家としての日本と、大宝律令の精神を体現する「知」そのものだった。唐を去る仲麻呂に大詩人・王維が捧げた荘厳なる送別詩。そしてただ一首だけ残された仲麻呂の有名な歌「天の原」が秘める謎―。伝説の遣唐使の苦難の生涯をつらぬく夢を、綿密な日唐交流史をふまえて鮮やかに描きだす。画期的評伝!
目次
第1章 新生「大宝律令」の子
第2章 日本から唐へ
第3章 科挙への挑戦
第4章 官人として宮廷社会を生きる
第5章 知恵が救った四人の命
第6章 阿倍仲麻呂帰国
第7章 阿倍仲麻呂と王維
第8章 天の原ふりさけ見れば
著者等紹介
上野誠[ウエノマコト]
1960年、福岡県生まれ。國学院大學大学院文学研究科博士課程後期単位修得満期退学。博士(文学)。現在、奈良大学文学部教授(国文学科)。研究テーマは、万葉挽歌の史的研究と万葉文化論。第12回日本民俗学会研究奨励賞受賞。第15回上代文学会賞受賞。『魂の古代学』(新潮選書。第7回角川財団学芸賞受賞)のほか、オペラ脚本、小説など著書多数(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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no.ma
14
阿倍仲麻呂は科挙に合格し玄宗皇帝のお気に入りで容姿端麗、王維と李白のマブダチ。望郷の念を抱きながら日本に帰国できなかった悲劇のヒーロー。新聞の連載小説で気になったので本書を手に取ったのだけど、こんなに凄い人物だったとは。有名な「天の原ふりさけ見れば…」は謎が多く、仲麻呂のものではないという説もある。でもそこがまた興味深い。盛唐と天平時代の日本は、詩歌こそ君臣の心を一つにするものだとする君臣和楽の思想の政治理念で結ばれていた。そんな時代もあったのだ。2021/09/11
鯖
14
遣唐使として海を渡り、勉学を極めて科挙に受かり、帰りたくても帰れず、 新唐で亡くなった阿倍仲麻呂の生涯を平易な文章でつづる。著者がもつ授業でアンケを取ったところ「天の原ふりさけみれば…」の歌を118人中、実に111人がそらで書けたのだそう。この歌の魅力は誰もが、この歌に自分の物語を見いだすことができるからではないかと著者は言う。かつて小田和正の「あの日あの時あの場所で…」の歌が大ヒットしたのは、誰もが自分の歌としてあの曲を聴けるからだといわれてたのをふと思い出した。2015/10/17
kiho
7
中国の唐に渡り、人生を切り開いた阿部仲麻呂☆日本に帰れずとも日本のことを常に思っていたことが伺える。2014/08/13
coldsurgeon
5
大宝律令が作られ、国家として歩み始めたころの日本から唐に渡った阿倍仲麻呂。科挙に合格し、高位高官に登り、帰国の思いを抱きながら、亡くなったレジェンド。稀有の昇進を遂げた非凡な才と、新生国家としての日本と、律令精神を体現する知そのものであった。仲麻呂の有名な歌「天の原…」の解釈の仕方は、とても面白い。2014/03/18
はちめ
2
資料に基づき、判らないことは判らないとはっきり述べられているのが好感。著者があまり想像を交えていないので、読者には逆に想像が膨らむ。2013/10/22
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