内容説明
昭和の初期、新興俳句運動の驍将として、官能俳句・フィクション俳句・無季俳句を取り入れ、既成の俳句概念から俳句を解放し、現代俳句への道を切り拓いたとされる俳人日野草城。昭和十一年「ミヤコ・ホテル」の連作俳句による毀誉褒貶の嵐の中での「ホトトギス」除名。戦時中は新興俳句運動への弾圧により俳句界から退く。戦後、病臥しながらも珠玉の境涯俳句を遺した。没後五十年を控え、草城の人と作品に迫り、再評価しようとする注目の評伝。
目次
1 「ホトトギス」破門劇顛末
2 俳壇の若き旗手―プロフィール
3 『花氷』の慕情―愛人佐藤愛子のこと
4 「ミヤコ・ホテル」の波紋
5 草城と蕪村―フィクション俳句
6 草城の無季俳句―俳句革新の先駆者
7 戦時下の隠退
8 病床六尺
9 『人生の午後』―日野晏子のこと
10 草城逝く―諸人旦暮の詩
著者等紹介
復本一郎[フクモトイチロウ]
1943年愛媛県宇和島市生まれ。1972年、早稲田大学大学院文学研究科博士課程修了。静岡大学人文学部教授を経て、神奈川大学経営学部教授。専攻は近世・近代俳論史。文学博士。俳号は鬼ケ城。第9回横浜文学賞、第6回加藤郁乎賞受賞。実験的俳句集団「鬼」代表。「ユーキャン俳句倶楽部」編集顧問。2005年4月よりスタートの「産経新聞」“テーマ川柳”選者
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感想・レビュー
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ゆうゆうpanda
37
連作「ミヤコ・ホテル」をきっかけに『ホトトギス』の同人から外された経緯を持つ草城。新婚初夜を詠んだ創作の艶っぽさに虚子が面食らってしまったというのが真相らしいが、その萌芽は第一句集『花氷』からあったのだという。細菌恐怖症、初恋女性への思慕を句材にするなど、面倒臭い部分もあるものの、保険会社の重役まで勤め、妻子を愛するフェミニスト。平和を愛するリベラルな思想の持ち主だったことなど、人としては真っ当な愛すべき人であった。病床では写生に回帰しているが、つまりは全ての句柄をこなせる天才。身体が丈夫だったらと思う。2017/05/04
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