出版社内容情報
グロテスクなのになぜか心地いい。
酒飲みYouTuberとして名を馳せる著者が稀有な発想力を見せつける! 初の短編小説集。
人間関係や恋愛関係。小さな困難が積み重なり、複雑に絡まり合い、いつの間にかがんじがらめになる……そんな難しさや不確かさ、孤独や絶望なんとか乗り越えているすべての方に、心地よいほろ酔いを届けます。
既婚者との関係から抜け出せない女性を救い出すために、一本の口紅が取った驚きの方法とは?(「口紅の弾丸」)
ミニマリストを極めすぎた男、全てを捨てて、最後に捨てたものとは?(「 」)。
地下アイドルとして奮闘する少女を守り支える、くまのぬいぐるみの不思議な力とは? (「くまのくぅーちゃん」)
嵐の夜偶然知ってしまった酒の味。酒を求めて人間になることを決意し、裏切りを重ねた人魚が見つけた未来とは? (酒に溺れた人魚姫、海の仲間を食い散らかす)
最後のどんでん返しに息を呑む! 「まさかこんな展開になるなんて!」と、新鮮な驚きに包まれる!
日々の痛みを和らげる「お酒」のような恍惚と同時に、酔いが醒めたときの筋肉痛や頭痛のような痛み、それでも現実に立ち向かう一人ひとりへのエールのような余韻が残ります。
内容説明
人はかくも汚くて、美しい。もう一度だけ、味わいたいの―あの恍惚を。そうして人魚は人になる決意をした。陶酔と衝撃の短編10篇。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
白雪ちょこ
30
短編集全10話、全てにおいて面白かった。 口紅、猫、牛丼、クリームソーダは、切ないけれど心が温まるいい話だったが。 フラワー、ビデオカメラ、くま、「」は、猟奇的で狂気的、ゾっとさせられるような話だった。 表題にもなっている人魚姫は、童話の人魚姫にも訪れられており、作者の「物」に対する視線からの物語が、とても面白く世界観にのめり込むことができた。 短編のラストに書かれている、カクテルの成分表やイラストなども、読んだからこそわかる面白さが詰まっている。 作者の次回作も、是非読みたい。2023/08/19
ゆう
28
独特の感性で、口紅になってみたり、猫になってみたり、いろんな視点から物語が紡ぎ出される。 個人的には人魚の話と最後のミニマリストの話が好き。 特にミニマリストは予想のつかない終わり方で面白かった。2021/11/18
Kazuki
23
妄想を続けることでストーリーになる。確かに。 ゆっけさんはどこか「欠落した人間」に魅力を感じるのでしょうか。 そんな印象を持ちました。 僕が妄想で物語を作る時は「救いようがないほどの不幸」を後天的に背負わせるのが好きです。 理不尽や不条理が続き、追い込まれた人間が、自分より僅かに状況が良い人と思える人に事情も伝えず力を貸す。 その自爆とも取れる善意にキュンとします。 そして物語はそこで終わり。そこに救いはいらない。 僕は「生き様」よりも「死に様」も方が好きなのかもね。 あくまで妄想の話ですが。 2022/01/13
えりまき
19
2024(153)短編集。初めましての酒村さん。優しかったり、ブラックだったりの読みやすくて面白い!口紅、猫、お花、魚、ぬいぐるみ、牛丼、ビデオカメラ、クリームソーダ、ショートケーキがから見た人間社会。最後「 」のミニマリストのお話が一番好きです。2024/06/04
カキ@persicape
15
お酒は飲めないけど、酒豪を眺めるのは好きな私。巨大なジョッキでアルコールを次々と流し込む飲みっぷりは下戸の私には眩しく映る。そんなわけで度々みるYouTuberのひとりに酒村ゆっけ、さんがいる。美味しそうに飲み食いする姿もそうなのだけど、ナレーションの語り口が大好き。可愛い表紙だしさぞかしポップな短編集なのだろうと読み始めたんだけど、これが結構ホラーでヘビーな内容が多くて。ぞくぞくしました。表題作の人間界から落ちてきた酒になりふり構わず恋する人魚姫の話が特に良かった。お酒好きにオススメ!2022/12/18