内容説明
村を救った猿神のもとへ輿入れした少女が、夫を殺害して村に戻ってくるという昔話「猿聟入」。そこで語られた供犠と異類殺害の物語は、その後のマンガ、小説、映画などにも繰り返し現れてくる。過去の民話と現代のサブカルチャーを通庭するものは何か。そして、その背後にひそむ通過儀礼の真の意味とは?「遠野物語」「赤ずきんちゃん」から「タッチ」「ホットロード」「めぞん一刻」まで、「民俗学者」大塚英志が縦横無尽に分析した、渾身の物語論。
目次
通過儀礼という主題
異類殺害と通過儀礼―「猿聟入」を読む
最初の求婚者の死―『ホットロード』『タッチ』『めぞん一刻』を読む
誰がトーマを殺したか―『トーマの心臓』を読む
供犠と“子殺し”―「瓜子姫」を読む
消費社会の“赤ずきんちゃん”―グリム版「赤ずきんちゃん」を読む
神隠し考―『ピクニック at ハンギングロック』と『遠野物語』を読む
「鉄腕アトム」の首―『アトム大使』と『わたしは真悟』を読む
供犠志願者の動機―『フィツカラルド』を読む
自己犠牲という禁忌―「身がわり山羊の反撃」を読む
“外部”はどこにあるのか
通過儀礼の不可能性をめぐって
ビルドゥングス・ロマンと「移行対象」殺害
“癒し”としてのクマ 移行対象論
著者等紹介
大塚英志[オオツカエイジ]
1958年、東京都生まれ
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
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三柴ゆよし
5
この人は矢張り「民俗学者」と括弧で括られるべき人。すごく刺激的で面白いんだけど、逆に面白すぎて胡散臭い。個人的には好き。2008/08/07
ドリルメロン
4
成熟が限りなく難しい社会の中での通過儀礼は、どのようにしてなら可能なのか。人はどのような手続きを踏めば、子供から大人へと移行していくことができるのか。必要な構造と手続きについて、発達心理学の”移行対象”の概念とのアナロジーを考えながら、古代の民話から現代の物語に至るまでの物語を縦横無尽に読み解いていく。 ”移行対象”との分離、”幻滅”という手続きについて、個人的に特にもっと深く知りたいと思った。 読みたい本が一気に10冊くらい増えた。2016/10/01
眠る山猫屋
4
『ピクニック at ハンギングロック』と『フィッツカラルド』。どちらも大好きながら、底流を読み切れなかった映画。なんだか今回、解消したような(笑)しかし諸星大二郎作品を思い浮かべてしまったのは、みなさん一緒ですよね? 2011/02/17
つかさ
4
恣意的と言ってしまえばそうなのだけど、今まで判然としなかった他作品の解釈に妙にすっきりできた。2010/05/27
読み人知らず
3
大塚英志の評論は漫画に比べれば読みにくいので飛ばし飛ばし読む形になるけれど面白かったよ。誰かのための死というのは普通にあることなんだ2016/04/09