内容説明
両界曼荼羅のエロチシズムはどこからくるものなのか?「即身成仏」を究極の密教的エロスとする空海密教。その「入我我入」の思考を跡づけつつ、「空無化する性」という点でこれに通底する『源氏物語』光源氏の「色好み」について論じ、さらに女人往生を説く法華経信仰と女性神化した菩薩像の考察から、性の超越としての「変成男子」「変成女子」という変性のエロチシズムについて描く。密教的エロスの昇華に焦点を結んだ名著。
目次
1 密教的エロスの展開(“落差”への旅―玄奘と空海;密教の発見;密教から反密教へ;“即身成仏”のエロス;空海密教と『源氏物語』を結ぶもの)
2 変性のエロティシズム(法華経信仰と物語の世界;性の超越;“女人往生”への道;女性化した男をとりまく女たちの物語)
著者等紹介
山折哲雄[ヤマオリテツオ]
1931年生まれ。宗教学者。東北大学文学部印度哲学科卒業。同大学文学部助教授、国立歴史民俗博物館教授、国際日本文化研究センター教授を経て、同センター所長などを歴任(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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yozora
2
禁欲に関して最澄をニルヴァーナ的禁欲(抑圧型)、空海を密教型禁欲(昇華型)とし、空海の密教観は源氏物語に現れる(性的飢餓感のない)光源氏の「積極的に男であることの無意味(空無化された男性性)を生きる」ことと芯を同じくするという。論は全体を通して怜悧でよかったが、僅かに飛躍が目についた。例えば、源氏物語に関する女性的男性の論はいいが、平安後期の女人往生説の流行は単に大乗仏教が大衆に広まったからであり、前後に相補関係が本当に成り立つのか、とか。しかし男性性の無化を重視する立場はラカンの女性的享楽を連想させた。2014/03/03
donky
1
密教―大乗仏教の最終盤に位置する世界観に肉薄しようとする、著者格闘の研究。空海の世界観がどのように追及されたのかを辿る……。しかし、専門家にとっても難解な宇宙観で、必ずしも説明に成功しているとは思えない。Ⅰ―1章~3章は大乗の竜樹の空論から密教がどのように飛躍したのかが説明されないので、即身成仏への展開もよくわからない。4章以降は社会文化論で、これがミソか。Ⅱは比較宗教論なのか、宗教文化論か。いづれにせよ、つまみ食い的論述なのが残念です。啓蒙に徹して書いてほしかった。2014/04/24
うちこ
0
空海さんを掘り下げています。空海さんて、あのエロス全開の時代の人なんだよねというスタンスを1ミリもずらさずに語り続ける内容がたまりません。 かなり「オレ的にはこう見るぞ」という説が炸裂ですが、こういう勢い、大好きです。2014/11/27
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