出版社内容情報
「おじいさんは山へ木をきりに、おばあさんは川へ洗濯に…」。誰もが一度は聞いた桃太郎の話。そこには日本固有の信仰が秘められていた! 昔話の構造や分布などを科学的に分析し、その謎を解き明かす。
内容説明
幼いころ、だれもが胸をときめかせて聞いた桃太郎や一寸法師、瓜子姫など“小さ子”の物語には、神話時代の謎が秘められていた。全国各地に伝わる説話を収集して子細に分析、そこに込められた日本民族固有の信仰を見出す。知的好奇心を刺激する歴史的名著。
目次
桃太郎の誕生
海神少童
瓜子織姫
田螺の長者
隣の寝太郎
絵姿女房
狼と鍛冶屋の姥
和泉式部の足袋
米倉法師
著者等紹介
柳田国男[ヤナギタクニオ]
1875年、兵庫生まれ。1900年、東京帝国大学法科大学卒。農商務省に入り、法制局参事官、貴族院書記官長などを歴任。35年、民間伝承の会(のち日本民俗学会)を創始し、雑誌「民間伝承」を刊行、日本民俗学の独自の立場を確立。51年、文化勲章受章。62年没(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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テツ
24
桃太郎。浦島太郎。瓜子姫。日本人にはお馴染みの昔話の数々。よくよく観察してみれば全国津々浦々に広がるそれらの物語は同じように見えても細部が全く異なっていたりする。収集と分析。物語の伝播を掘り起こしながら、その根底にあるものはなんぞやと延々と追い求める。こうして無責任に娯楽として読んでいると民俗学というものはなんて楽しいんだろうと思うけれど、情報収集と分析、現地調査がいかに地味で地道な作業かということも知っている。本当好きじゃなきゃできないよな柳田先生……。久々に他の著書も読みたくなりました。2019/10/24
春風
15
表題作を筆頭に、昔話にまつわる論考を収録する。本格昔話の他にも、笑話を昔話の派生説話であるとする説の提唱や、盲坊主による昔話の口述・話芸に伴う物語の変化への影響など興味は多岐に及んでいる。その中でも桃太郎はやはり特筆されるべき昔話であり、種々の昔話との符号点などが挙げられ、何度も考察の俎上に上がっている。柳田は昔話の起源は神話にあり、それが物語として成熟する事で、今のかたちになったという考えであるようだ。昔話から神話の残渣を掬い出し、上代と時代時代の日本人の関心を顕す事を、昔話研究に期していたようだ。2020/11/20
ゆきこ
15
「桃太郎」「瓜子姫」など今も広く知られる昔話や日本各地に伝わる説話を収集・分析し、その変化の過程や源流にある日本人古来の信仰を考察しようという一冊です。柳田先生の日本民俗学に対する熱い思いが伝わってきます。推論を脱しえぬ部分が多い分野ですが、昔の人がどのように物事を考え、どうやって物語が伝えられてきたのか、古に思いを馳せて考えることはロマンに溢れとても楽しいことだなぁ、と改めて実感しました。2017/04/25
roughfractus02
7
著者は古代の権力側の起源を語る神話の他にも多数の神話があり、その中に記紀もたまたまあるという意味で「説話」という。中でも権力的な神話以外に日本固有の思考習慣を見出そうとする著者は、その土地性が残っている「伝説」よりも中世に土地性を失った「昔話」に生き生きした古代人の信仰の痕跡を見出そうとした。桃太郎、海神少童、瓜子織姫、田螺の長者、隣の寝太郎、絵姿女房、狼と鍛冶屋の姥、和泉式部の足袋、米倉法師の地理的分布や諸バージョンを辿り海外の物語と比較する書者は、物語の元型を探究しつつ意識の深層へ触れるかに見える。2025/02/16
らむだ
4
“小さ子”の物語を中心に、全国各地の説話を収集し分析した一冊。昔話や伝説の起源を神話に求めた柳田の思想を辿ることが出来る。2024/02/12
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