出版社内容情報
柳田 国男[ヤナギタ クニオ]
著・文・その他
内容説明
「咳のおば様」「片目の魚」「山の背くらべ」など、日本各地に根ざした伝説を丹念に掘りおこす。昔話との違いにもふれながら、誰にでも読めるよう、平易な話し言葉で伝説の実例をあげ、その原型と変遷をひも解いていく。名作『日本の昔話』の姉妹編。伝説分布表付き。
目次
咳のおば様
驚き清水
大師講の由来
片目の魚
機織り御前
お箸成長
行逢阪
袂石
山の背くらべ
神いくさ
伝説と児童
著者等紹介
柳田国男[ヤナギタクニオ]
1875年、兵庫生まれ。1900年、東京帝国大学法科大学卒。農商務省に入り、法制局参事官、貴族院書記官長などを歴任。35年、民間伝承の会(のち日本民俗学会)を創始し、雑誌「民間伝承」を刊行、日本民俗学の独自の立場を確立。51年、文化勲章受章。62年没(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
HANA
40
子供向けということでいつもの柳田国男の文体ではなく平易な言葉で語られているが、中身の方は平易どころではなく様々な伝説や類話が収められておりとても重厚なもの。先日の「一つ目小僧」で例に挙がっていた片目の魚を始め、大師が清水を湧き出させた話や箸や石が成長する話、子供と伝説の関わり合い等、様々な伝説が日本各地から集められている。子供の頃にこういう実り豊かな伝説に触れたら、それだけでそれからの人生が豊かなものになりそうである。もちろん大人の目から見ても教えられる事が多い本であった。2013/03/01
テツ
24
柳田国男が収集した全国各地の伝説をこどもに向けて紹介するという内容。本邦に伝わる数多のお話を並べてそれらを丁寧に比較検証する態度に、民俗学のみならず学問に対する姿勢はこうであって欲しいなと思う。まず好きで好きでたまらないという情熱が大切だよなあ。山に川に海に。ほんの少し前までは森羅万象の裏側に目を凝らせば人間以外の存在を見ることが誰にでもできた。今は絶滅寸前のそうした存在もこうして読み継がれている間は生き延びていられるんだろう。伝説にはその国の香りが苦しいくらいに詰まっている。2020/01/21
寝落ち6段
14
自身の貴重な体験を語る人は多いけども、その土地の伝説を語る人はどれだけいるだろう。今はもう文献に収録されている形でしか存在しない伝説ばかりになっている。全国に似た伝説が残っているようだ。伝説たちを帰納的に分析すると、そこから当時の人々の願いや思いが見える。それを語り継ぐことで、例えば道徳、教訓などを教えていく。その伝説を聞くのは子どもだ。「日本は昔から、児童が神に愛される国でありました」と柳田は言う。その神たちの伝説を胸に抱いて、子どもは大きくなる。語り継がれなくなった伝説は、もう用済みなのだろうか。2021/09/15
roughfractus02
7
「昔々あるところに」で始まる昔話は移動する動物のようであり、場所に関わる伝説は植物のようだという著者は、ドイツ文芸学のMärchenとSageの区別の背景に前者の狩猟採集社会と後者の農耕社会の区別も重ねているようだ。本書では土地にまつわる物事の由来を語る伝説のバージョン化を「咳のおば様」「驚き清水」「大師講の由来」「片目の魚」「機織り御前」「お箸成長」「行逢阪」「袂石」「山の背くらべ」「神いくさ」「伝説と児童」の8つの主題で比較する。土地の境界を争う伝説の向こうには民族単位で争う国家の語りも透けて見える。2025/02/09
うえ
7
片目の魚「下野上三川の城がせめ落とされたとき、城主今泉但馬守の美しい姫が、懐剣で目をついて身を外堀に身をなげて死んだ。その因縁によって今でもその水にいる魚が片目だという」「遠州の海にちかい平地部では…夜分多くの火が高く低くとびまわる…天狗の夜とぼしといって、山から天狗がどじょうを捕りにくる…みぞや小川のどじょうに目のないのがいくらもいたそうで」「萩原の町の諏訪神社では…武士がやって来て…この社のあるところに城をきずくと…御神体をとなりの村に移そうとした。そうすると…大きな青大将がわだかまりのかなかった」2015/05/20