出版社内容情報
柳田国男が歩いた東北から日本を考える
名作『遠野物語』を刊行した十年後、柳田国男は二ヶ月をかけて東北を訪ね歩いた。その際の旅行記「豆手帖から」をはじめ、「雪国の春」、「東北文学の研究」など、日本民俗学の視点から深く考察した東北文化論。
内容説明
日本民俗学の金字塔『遠野物語』を刊行した十年後、柳田は一ヶ月半をかけて東北各地を訪ね、土地の人々と交わる。その旅行記“豆手帖から”をはじめ、風土と気候が一国の学問芸術に及ぼす影響を述べた“雪国の春”、六年後に再訪した小子内の宿への思いを綴った“清光館哀史”など十編を所収。明治から昭和初期の日本を記録、日本民俗学の父と呼ばれた偉大な先人による、東北を深く考察する文化論。
目次
雪国の春
『真澄遊覧記』を読む
雪中随筆
北の野の緑
草木と海と
豆手帖から
清光館哀史
津軽の旅
おがさべり―男鹿風景談
東北文学の研究
著者等紹介
柳田国男[ヤナギタクニオ]
1875年、兵庫生まれ。1900年、東京帝国大学法科大学卒。農商務省に入り、法制局参事官、貴族院書記官長などを歴任。1935年、民間伝承の会(のち日本民俗学会)を創始し、雑誌「民間伝承」を刊行、日本民俗学の独自の立場を確立。1951年、文化勲章受章。柳田の目標は日本独自の民俗学の確立にあり、調査対象は海山の民から平地の稲作農耕民へと変化した。1962年没(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
HANA
30
民俗学創始者の東北旅行記。雑誌や新聞に発表されたものを中心としてまとめられているだけあり、民俗学というより随筆のように読めた。ただその中にも菅江真澄の事や椿の事、樺の皮を紙の代わりに使う事、失業者問題や民間霊能者の事等、後年の民俗学に繋がるような所にしっかりと注目している所は流石である。他にも「清光館哀史」や「子供の目」等生きているうちにどことなく擦れ違うような悲しい話が心に残る。読みながら以前旅した男鹿半島や遠野、下北の山河や風光が目の前に甦るようであった。2013/02/13
Aminadab
23
『海南小記』の次に読んだが、『遠野物語』に続けて読むべきはこちらであった。一方で草木や雉の声など自然に対する鋭敏な感覚、他方で明治の近代化を経てもなお不時の苦難に遭いがちな常民へのシンパシーが横溢する紀行と、「東北文学の研究」などの考証がバランス良く柳田入門にはベストか。表題作は東北総論として申し分ないし、前者では「豆手帳から」「清光館」が哀切、後者ではなぜ常陸坊海尊に生存説があるかなど口頭伝承への洞察が鋭い(「生き証人」がいないと口頭での歴史は信憑性を欠くため)。ただ、もう少し親切に書いてくれないかな。2023/10/02
roughfractus02
8
東北各地を巡る聞き取り調査を紀行文体で記しつつ、「東北学」の構想を立ち上げるに至る本書の各エッセイでは、現地の人々を観察する側に立つ自身が他者として関与する点を著者が強く意識していたことが実感できる。「平地人」中心の国家体制が東北の人々の暮らしを軽視することに憤る著者は、人々の身に寄り添う姿勢と「平地人」ゆえに調査し観察する姿勢との狭間で試行錯誤を続ける。夏に訪れた東北の地で雪に閉ざされた冬を思いやる著者は、現地の言葉を生かした東北学を構想するが、標準語化した日本語と西洋的な学の構想では無理があると記す。2025/02/03
ゆきこ
8
大正中期から昭和初期の主に東北地方の民俗について書かれた一冊。表題作『雪国の春』と『東北文学の研究』が特に心に残りました。私も雪国の豪雪地帯で生まれ育った身なので、雪国の冬の閉塞感とじっと春を待つ雰囲気がなんとも懐かしくいとおしく感じられました。同じ日本といえども北と南では生活文化が大きく異なることを再認識。そして、小正月行事などの年中行事では北と南で多くの共通性が見られるという点がとても興味深いです。2016/03/28
尾白
4
覚書 西ヨーロッパ諸国の古典研究などは、人の考えを自由にするのが目的だと聞いているが、日本ばかりはこれに反して、再び捕らわれに行くために、昔の事を穿鑿しているような姿がある。2023/02/22
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- 和書
- それぞれの新渡戸稲造