内容説明
有名な「蛍の光、窓の雪」の歌のもとになった勤勉な男たちの話、夏目漱石のペンネームの由来になったひねくれ者の話。もともと子供の暗誦用に編集された『蒙求』は、礼節や忠義、夫婦のあり方など、大人が身につけておくべき不変の教養も多く含まれている。江戸から明治の日本でたくさん読まれ、現代に通じる教訓や逸話も多い。本シリーズならではの詳しい解説とコラムで、中国の歴史を知らなくても十分に楽しめる一冊。
目次
鷹のように残酷な〓(しつ)都、子持ち虎より恐ろしい〓(ねい)成
才気と意気込みに富む挨拶をする陸雲と荀隠
親のため、毛義は辞令を押しいただき、子路は米を背負った
孫楚は石で口をすずぎ、〓(かく)隆は書物を虫干しする
奇抜な方法で天子に進言し、その愛人に疎まれた袁〓(おう)と衛〓(かん)
よき理解者がいてこそ音楽は生きることを感じた向秀と伯牙
魯褒は『銭神論』で世俗を批判、かたや崔烈は金にまみれた
子のため、王陵の母は剣に伏して死に、孟子の母は三遷した
男をしのぐ才女だった斉后と王凝之の妻謝氏
しかめ顔も美しい西施と、魅力的なしなを作る孫寿〔ほか〕
著者等紹介
今鷹眞[イマタカマコト]
1934年、中国上海生まれ。京都大学大学院博士課程修了。名古屋大学・金城学院大学名誉教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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❁Lei❁
23
大学の課題に使用するため読了。夏目漱石のペンネームや唱歌「蛍の光」の元になった話が収録されています。故事を子どもに教えるために漢詩と漢文の注釈がセットで製作されたものですが、詩は掲載されていません。注釈がそもそも分かりにくいもので少々難解でしたが、ひとつひとつが短いのでさくさく読めました。三国時代近辺の政治情勢や風俗、歴史や倫理観など興味深い内容が盛り沢山で面白かったです。2021/07/18
崩紫サロメ
18
唐代に子どもが故事を学ぶために編まれた書で、4字×2の8字を一つの単位としている。平安以降には日本でもよく読まれ、「蛍の光、窓の雪」のように人口に膾炙するようになったものもある。本書はその一部に訳注をつけたものだが、解説が充実している。たとえば『晋書』に見られる陸雲と荀隠の挨拶の話。ここでは訳注あとに、この時代に(他の時代とは違って)重視されたのは何だったかが解説されている。他にも「周辺民族とシルクロード」など、蒙求に取り上げられた時代自体への興味を持たせるものが充実している。2022/09/19
qwer0987
8
蒙求は本来韻文詩の方をいうもので、現在知られているのはその韻文の注釈であるらしい。ただ解説者が指摘するように典籍からの引用が下手なためわかりにくい部分が目立つ。だが古典の有名エピソードを色々知るには都合が良い。個人的に面白かったのは、ゴルディアスの結び目のような話の斉后、中島敦の小説にも登場する蘇武、韓信を引き留めた蕭何の熱意、悪しき風習を打ち払うため過剰な方法を用いた西門豹などなど、知っているエピソード、知らないエピソード、それぞれ興味深い内容だった2023/02/16
ダージリン
4
中国古典に親しもうと思い読んでみる。巻頭に蒙求に対してなかなか辛辣な評価が書かれており、若干読む気が削がれてしまった。巻頭の解説にあった通り、省略されて唐突な終わり方をするものもあり、分かりにくい話もあるのだが、子供達に故事を覚えさせるために広く故事を集めたのであろう。2017/10/11
二木康全
2
大河ドラマ「光る君へ」の第1話で、幼い紫式部が父親から『蒙求』を読み聞かせられる場面がありました。もともと『蒙求』は子どもの暗唱用に編集された本とのことですが、大人が読んでも発見があります。例えば、BGMとしてもおなじみの「蛍の光」のもととなった話が『蒙求』に収められていたことを私は初めて知りました。2024/07/30