出版社内容情報
沖縄を背負うことなしに、私の戦後の人生はあり得なかった――
沖縄学の第一人者による壮絶な戦争体験記。外間青年の目を通した語り口ながら、一個人の体験に留まらず、戦後明らかにされてきた多くの資料を織り交ぜ構成。巻末には著者同様、沖縄初年兵だった人々の体験記も収録。
内容説明
昭和20年3月25日、本土防衛の犠牲となった戦闘は、米軍の艦砲攻撃で始まった。中でも「ありったけの地獄をひとつにまとめた」と米軍に言わしめた前田高地での激戦は壮絶を極めた。爆風に吹き飛ばされ、機関銃の乱射を受ける日々、繰り返すゲリラ戦。武装解除後、800名の大隊は29名となっていた―。終戦後に出された多くの資料をふまえた、一個人の体験に留まらないスケールの戦記。沖縄学の第一人者による貴重な記録。
目次
1 決戦前夜(学童疎開船對馬丸の悲劇;昭和十九年、十・十空襲 ほか)
2 前田高地の激闘―米軍上陸から敗戦まで(本島上陸;第三十二軍の作戦計画と前田高地 ほか)
3 捕虜収容所にて(屋嘉捕虜収容所;収容所での日々 ほか)
4 証言編(志村大隊「前田高地」の死闘(抄)
米軍公刊戦史―米軍の前田高地の戦闘 ほか)
著者等紹介
外間守善[ホカマシュゼン]
1924年那覇市生まれ。法政大学名誉教授、沖縄学研究所名誉所長。19歳で現地入隊、最激戦地で戦い、奇跡的な生還をはたす(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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kawa
30
沖縄師範学校生による沖縄戦の体験を描いた「沖縄健児隊」(1953年刊)既読の後、書店をのぞき歩いていたら編著者の一人の外間守善氏(言語・沖縄学者)の本書を発見で早速購入。前著から60年、沖縄戦のなかでも屈指の激戦・前田高地の戦い(米名・ハクソー・リッジ)の全貌とその詳細が知れる価値高い一冊。後書きでは本書の方が戦いの生々しさはあると記されるが、読み手としては「沖縄健児隊」の方が優る印象。時の経過の中で、その戦いの悲惨さと全貌が理解できる歴史的価値に本書の意義があるように思う。2025/04/13
Miyoshi Hirotaka
20
サイパンの次は台湾か沖縄。住民疎開、部隊編成、学生の動員や招集が始まった。精鋭部隊の台湾への移駐、米潜水艦による疎開船對馬丸の撃沈、ひめゆり部隊の結成など後に失策や悲劇とされた伏線がここで発生。前田高地は東西南北に展望が利く防衛の第一線。この一部となる断崖絶壁が映画『ハクソー・リッジ』の舞台。戦闘は4月末から約一週間。狭小な戦場は日米双方が接近戦と白兵戦を展開する修羅場となった。師範学校の学生だった著者は志願し、沖縄戦開始時には初年兵で戦闘に参加。実名で記載される同級生や同僚の証言が生々しく当時を語る。2025/01/24
二人娘の父
7
沖縄学の第一人者で沖縄の歌謡集「おもろさうし」などの研究で知られる外間守善氏の従軍記録。激戦で有名な前田高地を主とする記録。私が映画「ハクソーリッジ」でその名を知ったのが前田高地。実はあまりよく分からずに何度か足を運んでいた。現在は公園で展望台もあり、たしかに沖縄本島全体を一望できる。従軍戦史はその階級が下になればなるほど当時の本音が現れていてリアル。絶望的戦況のなかで公然と命令に背く様子も。米軍側の記録も収録されており、外間氏の編集方針があらわれているように思う。沖縄を知るためには必読である。2021/04/08
こぺたろう
7
映画ハクソーリッジのCMを見て前田高地の存在を初めて知り、関心を持ったところ、本書に行き着いた。沖縄戦が始まる前から守備隊の体制は迷走しているし、何より物量差がありすぎる。他の戦場同様、武器と食糧が早々と尽き、奪いながら戦うというのは想像を絶する。なお、ハクソーリッジのモデルになったデズモンド看護兵の話も、第4章で紹介されていました。2017/07/01
あや
6
沖縄ご出身で沖縄地上戦をご経験されのちに沖縄文学者になり法政大学や國學院大学でお教えになられた外間守善さんの貴重な沖縄戦の手記。弾丸が足に当たり止血するものがなく土を刷り込んで止血したなどの描写。疎開するご兄妹との別離。戦争なんてむごいだけで誰も幸せになれない。私も法政大学で外間先生に言語学を教わったけど先生のご生前にこの本を読めば良かったと後悔している。この本は本当に多くの方に読まれてほしい。沖縄戦の悲惨さがよくわかるので。2020/03/15