出版社内容情報
「思い出す」には近すぎる――「昭和」は総じて痛ましく、その言葉の群れはたいてい過剰に陶冶されていた。詩や小説に注ぎ込まれたその熱と痛みは、激動のうねりを浴びて変化しながら一時代を築いていく。あまりに多様、あまりに孤独、あまりに熱っぽい。文学作品から引き出す新たな昭和像。
目次
第1章 中心から逸れて(大手拓次『大手拓次詩集』一五〇夜;萩原朔太郎『青猫』六六五夜 ほか)
第2章 ヒーロー・悪・復讐(中里介山『大菩薩峠』六八八夜;林不忘『丹下左膳』七三四夜 ほか)
第3章 歴史の影を射る(永井路子『北条政子』一一一九夜;野上弥生子『秀吉と利休』九三四夜 ほか)
第4章 ニッポンを問う(大岡昇平『野火』九六〇夜;武田泰淳『ひかりごけ』七一夜 ほか)
著者等紹介
松岡正剛[マツオカセイゴウ]
編集工学研究所所長、イシス編集学校校長。70年代にオブジェマガジン「遊」を創刊。80年代に「編集工学」を提唱し、編集工学研究所を創立。その後、日本文化、芸術、生命科学、システム工学など多方面におよぶ研究を情報文化技術に応用しメディアやイベントを多数プロデュース(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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読書という航海の本棚
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
阿部義彦
14
松岡正剛さんの千夜千冊エディションより、今回のテーマは『昭和の作家力』。今回は本の僅かですが自分が親しんだ作家や読んだ作品も有り、実に刺激的でした。織田作之助、坂口安吾、江戸川乱歩、安部公房、から、井上ひさし、大藪春彦、高村薫まで、自分が特に興味を惹かれたのは、澁澤龍彦、松本清張、野坂昭如、等です。2025/03/20
Gokkey
9
空前の(極私的)昭和ブームである。昭和に産まれ、生意気盛りの頃に小渕さんの平成の二文字を眺め、大自然の脅威に晒されつつ通り一篇のライフイベントを経験した。それも束の間、世は令和となり、落ち着きが見えだしたパンデミックとは対照的に大国による戦争は落とし処が見えない。鉄道の爆破だ誰の仕業だというような日々の報道に触れ、戦争慣れする自身に違和感を覚えつつ、どこかの国でも過去に流布した(らしい)プロパガンダに類する匂いを感じる。昭和を形成したものは何か?その何かを感じたく、セイゴオ氏にお手伝い願った次第。2023/05/13