出版社内容情報
山田 康弘[ヤマダ ヤスヒロ]
著・文・その他
内容説明
土器に納められた生後間もない赤ちゃんの遺体。妊娠線が刻まれた臨月の女性土偶。抱きあって合葬された親子の墓。顔にイヌを乗せて埋葬された女性―。縄文の墓や遺物は、精一杯の生を送り、ときに病魔や死の恐怖と闘った何千年も昔の人びとの姿を雄弁に物語る。そしてその背後に広がる、自然や母胎への回帰、再生をめぐる死生観とは?スピリチュアルブームや散骨葬など、現代日本人の死のあり方をも照らし返す、墓の考古学。
目次
まえがき―墓を研究するということ
プロローグ―発掘調査の現場から
第1章 縄文時代の墓とその分析
第2章 土中から現れた人生―ある女性の一生
第3章 病魔との戦い―縄文時代の医療
第4章 縄文時代の子供たち―死から生を考える
第5章 縄文の思想―原始の死生観
著者等紹介
山田康弘[ヤマダヤスヒロ]
1967年、東京都生まれ。国立歴史民俗博物館研究部教授、先史学者。縄文時代を中心とする先史墓制論・社会論を専門とする。筑波大学第一学群人文学類卒業後、筑波大学大学院博士課程歴史人類学研究科中退、博士(文学)(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
chimako
79
誠に興味深い本だった。表紙の土偶は屈葬の様子だと言われているが、表情は座ってお産をする女性の痛みと恍惚を表しているように感じる。生死感、特に妊娠出産と言う女性にとっての一大事が書かれた章では思うことが多かった。埋甕(ここでは土器棺墓)に入れられたのは生きて産まれたが死んでしまった新生児、土壙に埋葬されたのは死産の子……発掘に携わっていた頃、住居の出入口に甕が埋められていたのを掘り出したことが有る。学芸員の話で再生を願ったものと知った。子供たちも生存率も低かった時代、産み育んだ母の強さを改めて思った。2018/09/04
り こ む ん
36
読友さんからの拝借本。こう言う本を読むと…何故に?自分も研究というジャンルの選択をしなかったのだろうと感じる。内容はどちらかと言うと解説より、発掘調査においての説明のが主だったモノだったのだけど、研究の面白さがひしひしと感じる。調査し、精査し、思考する。思いを馳せる。イロイロな本を読んで同じような体験はしているかも知れないけれど、やっぱり自ら発見し…って憧れるな。2018/10/24
kana
30
縄文時代の人骨を発掘し、太古の人々が何を大切にしながら暮らしていたのかを予測する試みの途方もなさに平伏すと共にそのミステリアスさに魅了されました。たとえば当時、親子の繋がりが大切にされていたのかどうかもそう予測する基本的なプロセスから紹介されます。大人と子供が一緒に埋葬されたからといって親子と決めつけず、そう予測するための根拠を探す。決定的証拠なんてないから、切れそうな細い糸を手繰り寄せるように小さな事実をかき集めてくるしかない。でもだからこそ想像することが考古学のロマンなんだよなーとわくわくします。2022/05/10
姉勤
25
文庫化による改題前の「生と死の考古学」の方がふさわしい内容。縄文時代の貝塚や以降から出土される 埋葬された遺骨。思わぬほど自宅の近所に、遺跡がかつてあり(宅地化されて今はない)郷土史にも興味がわく。 死と生。回帰と再生。そのサイクルに失敗した、死産や産後の死。より悼むからか、忌むからか 母子の埋葬の特徴。一言で言っても縄文時代は一万年以上。数百世代の間に変わったもの、変わらぬものに想いを馳せ たかだか数年前に発生した「正義」のために、振り回される現代を省みる。2021/11/12
PAO
19
『縄文展』を観に行き縄文を更に知りたくて読みました。顔に犬を乗せて埋葬された若い女性、そのすぐそばには土器に納められた赤ちゃんの遺体が…。これだけでも小説家なら一つの物語が書けそうな発掘現場について科学的な見地から想像力豊かに解説をしてくれます。『縄文展』の時も思いましたがキリスト紀元の5倍もの長さを持つ縄文時代の奥深さは私たちの想像をはるかに超えるとともに根源的な部分での懐かしさも感じます。この本は死者の骨や墓を通じて最新の研究成果と共に解り易く紹介してくれるガイドブック『縄文の歩き方』だと思いました。2018/09/11