出版社内容情報
竹田 青嗣[タケダ セイジ]
著・文・その他
内容説明
大量生産、大量消費、大量廃棄を特徴とする現行の資本主義は、格差の拡大、資源と環境の限界を生んだ。この矛盾を克服する手がかりは、近代社会の根本理念を作った、ホッブス、ルソー、ヘーゲルの近代哲学にある。国家=権力の廃絶ではなく、人民権力=市民国家を成立させることで、万人の人間的「自由」を実現する。今、これをいかに国家間へ、世界規模の原理へと拡大できるかを、哲学的観点からわかりやすく考察する。
目次
第1章 哲学の基本方法
第2章 近代社会の基本理念
第3章 近代国家の本質
第4章 社会批判の根拠
第5章 人間的「自由」の本質
終章 希望の原理はあるか
著者等紹介
竹田青嗣[タケダセイジ]
1947年大阪生まれ。早稲田大学国際教養学部教授。文芸評論、思想評論とともに、実存論的な人間論を中心として哲学活動を続ける。哲学的思考の原理論としての『欲望論』を執筆中(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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politics
5
ポストモダン等による批判哲学に対し、ホッブズ、ルソー、そしてヘーゲルの哲学により近代国家、ひいては自由の擁護を考察した一冊。著者独自の概念提起が多々見られるが、それが大変ヘーゲル哲学を捉える補助となっており理解しやすく感じた。またヘーゲルの哲学とアレントの近代批判とが一定の共通点を持っているとの指摘は意外性があり大変興味深かった。2022/09/19
孔雀の本棚
4
Encounter Scopes Unclear Next Comments 消費の普遍化即ち資本主義の帝国化は果たして一般福祉の実現のための唯一の方法なのだろうか?例えばコンヴィヴィアリティの問題を考えたときこれは必ずしも正当性は持たないのではないか?そして環境問題を扱うなら、「抑制」というやり方は決して満足できるものではないだろう。脱構築の夢。ヘーゲルの地平にあっては「錬金術」であろうが、我々には新たな資材がある:科学。2022/02/06
なっぢ@断捨離実行中
4
以前どこかで読んだような……とデジャヴを感じつつ最後まで読み進めるとどうやら再版本のようである。ああ、どうりで。改めて読んでもさわりから「哲学の概念的思考は共同体の限界=物語を超え普遍化する」だからな。哲学への意思とでも呼ぶしかない力強い議論には圧倒される。最後は橋爪見田らの議論を参照し、資本主義がもたらす世界的な格差、環境問題から「資本主義の正当性」を問いて終わる。ここでは炭素税の扱いのみだが、今ならピケティの議論とも接続できるだろう。最近ニュースから消えつつあるタックスヘイブンやトービン税の問題だ。2016/07/20
刳森伸一
3
哲学は資本主義を変えことができるはずであるという趣旨の論考で、説得力はあるもののその方法は抽象的な言説を抜け出ていない。具体的な方法が哲学の範疇に含まれるかどうかすら分からないが、作者はその構築を目指しているし、また目指したいと思う人にとっては刺激的な本となろう。2017/06/23
artgrape
2
筆者の力強い思考力を感じる。そして、わたしは今まで問いの立て方を間違っていたことに初めて気がついた。今までわたしは「人は自由で平等であるべき」という点から出発していたが、ここからは現状批判と相対主義しか出てこない。長らく、この相対主義をどうすれば克服できるのか分からなかった。そうではなく「人が自由で平等であるためにはどのような制度や社会が必要か」と問うべきであって、要は出発点だと思い込んでいたものが実は到達点だったのだ。思考がぐるりと回転し、改めて世界を観る視点を得られた。久しぶりの衝撃的読書体験。2021/03/06