出版社内容情報
風土記は、8世紀、元明天皇の詔により諸国の産物、伝説、地名の由来などを撰進させた地誌。現存する資料を網羅し新たに全訳注。漢文体の本文も掲載する。上巻には、常陸国・出雲国、播磨国風土記を収録。
内容説明
奈良時代初期、天皇中心の律令国家体制を整えるため、日本各地の情報が中央に集められた。それが、国や郡、山河や地方の名前と由来、地質の豊かさ、収穫できる産物、その地で伝わる昔話などをつぶさに記録した『風土記』である。上巻には「国引き神話」などを収める「出雲国」に加え、写本が現存する「常陸国」「播磨国」を収録。新たな研究に基づく本文、訓読、注釈、現代語訳、解説、さらに地図、索引を収載した決定版!
目次
風土記総解説
常陸国風土記(総記;新治郡;(白壁郡) ほか)
出雲国風土記(総記;意宇郡;島根郡 ほか)
播磨国風土記(賀古郡;印南郡;飾磨郡 ほか)
著者等紹介
中村啓信[ナカムラヒロトシ]
1929年山梨県生まれ。國學院大學大学院博士課程修了。上代文学専攻。文学博士。國學院大學名誉教授。もと、古事記学会代表理事(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ピンガペンギン
26
角川ソフィア文庫版には地図と原文が載っている。原文が理解できる人は少ないと思うが、地図があるので、現在の行政区画と照らし合わせることができる。「常陸国風土記」那賀郡という場所が現在の水戸市にあたり、印象的な蛇神のエピソードはこの郡のものだ。この古い時代の文書があるということも、後に水戸藩での伝統への自信につながったのだろうか?水戸藩は江戸時代に廃仏運動を開始していた。もともといた人達が武力で制圧されていく様子が描写されている個所も多い。山岳信仰の伺われる個所(P93)もあった。2025/03/29
やいっち
26
読了した。 先月上旬から、与謝野版「源氏物語」を読んでいる。「古事記」や「万葉集」を始め、日本の古典を読むのは、歴史や古代史への関心もあるが、日本語の形成や語彙、語感、音韻、表現、和歌などに見られる、五七五七七という音の連なり、人々の繋がりに係わる歌謡の要素、素養のない小生だと駄洒落になりかねない「掛詞」という遊びなど、味わうべき要素は多岐に渡るからでもある。2018/03/21
圓(まどか)🐦@多忙のためほぼ休止中
5
上巻は常陸、出雲、播磨。正直どれも中央政権からの地方データの収集という編纂意図のためか地名由来の羅列が殆どなので資料的価値はともかく古事記みたいに話としても面白さを期待すると肩透かしです。それでも千葉県民としては隣の県で馴染みのある地名由来が多数登場の常陸国が一番読みやすかった。出雲は解説にもあるように記録としても綿密さ、詳細さにはある種の意地、近所の播磨は中央との密接さで距離感に地方色や歴史を感じる。散逸が多いのが惜しいけど、逸文中心の下巻に馴染みある伝説との再会を期待したいです。2020/07/08
Hiroshi
4
和銅6年(713年)に元明天皇より風土記編修の命令がだされ、64カ国2島の風土記ができたのだろう。現存する風土記は、完本は出雲の国の1国分だけであり、常陸国、播磨国、豊後国、肥前国の4国は省略又は脱落があり、その他の国は大部分が失われている。その中の常陸国・出雲国・播磨国の本文・訓読文・現代語訳からなるのが上巻。各国毎に編修されているので、風土記には国毎に個性が表れている。◆常陸国は古老が常陸の由来から語りだす。昔は相模国の足柄山から東は「あずまの国」と呼ばれていた。それが8つの国となり常陸の国ができた。2020/12/15
ragingriver
3
常陸の国と出雲の国の記載の違いには大いに驚かされる。出雲の国に関する記載の詳細さには目を見張るものがあり、生涯にわたって研究をおこなう価値のある書物。2019/01/07