出版社内容情報
長野 まゆみ[ナガノ マユミ]
著・文・その他
角川書店装丁室 西村弘美[カドカワショテンソウテイシツ ニシムラヒロミ]
著・文・その他
内容説明
武蔵野にひっそりとたたずむ一軒の古屋敷。そこは、世界をはばかる逢瀬のための隠れ宿「左近」である。十六歳になる長男の桜蔵は、最近どうも奇妙な男にかかわることが多い。生まれながらの性質なのか、その気もないのに、この世ならざるあやかしたちを引き寄せてしまうのだ。彼らは入れかわりたちかわり現れては、桜蔵を翻弄するのだが…。これは夢か現か、人か幻か―。生と死の境をゆきかう、いともかぐわしき物語。
著者等紹介
長野まゆみ[ナガノマユミ]
東京都生まれ。女子美術大学卒業。1988年『少年アリス』で文藝賞を受賞しデビュー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
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aquamarine
90
隠れ宿「左近」の女将の息子、桜蔵。彼が案内した男は夢か現か妖か、桜蔵のみずみずしさに惹かれていると読み手もその境に気づかない。最初の章で現れる風呂の天窓から降り注ぎ、零れ散る大量の桜の花びらに息をのむ。章ごとに季節は廻り、そのたびに作者の文章に酔い、夢も現も、生死も、男女すらも全てに境がないのではないかと思わされる。彼に惹かれてやってきた男たちは、みんな満足して旅立っていけたのだろうか。傾けた蛤の盃からはらはらとこぼれた桜の花びらは、まいあがり、私の上にも降り積もる。2020/04/26
コットン
81
いちこさんからのおすすめ本。15歳以下の少年を対象に独特の世界観を作っていた著者ですが16歳の青年を主人公にしたことで幻想的な妖しさが出ている(どちらも好きですが…)。『背中に蝶が群れて翔んでいる』話が特に印象的!最近感じるのは少しここらで「箸休め」的な感覚で長野さんを読んでいる自分がいるらしい。それだけ相性がいいんでしょう!2013/06/11
藤月はな(灯れ松明の火)
63
再読です。十二か月の話なので「一か月に一話」と決めて読んできました。人または人でないモノである「男」に極上の「女」として見初められ、養われ、彼岸と此岸を行き来する桜蔵(「少年あるいは青年」)はうっかりもほどがあるが桜の花びら、蝶、髪の毛、西瓜、鍵、手帳、器、蜃などありふれたものに隠された意味がよりストイックで艶めかしくさせています。今時、珍しい粋も垣間見えて興味深いです。「秘すれば花なり」という言葉がこの作品には合うと思います。2012/03/01
瑞佳
56
『百鬼夜行抄』に『エマニエル夫人』を投入して桜葉でゆるっとコーティングした感じ。耽美で夢幻的。しっとりと艶っぽくて、官能風なんだけどサラサラ読める。淑やかで風情があって言葉のひとつひとつが無駄のない美しさで、その独特の世界観が心地よい。青年と少年とのあわいに漂う、まさに匂い立つような危うさが人ならぬものを呼び寄せるのだろうか。しかし桜蔵くんも受難続きやね。あれじゃ身がもたんやろに。身内すら妖みたいなもんやし。柾さんの入れるココアの描写がすばらしくて、わたしもご相伴にあずかりたい!と本気で思ってしまった。2016/11/30
しゅてふぁん
53
読み始めて先ず感じたことは長野氏の‘ことば’に対する強いこだわり。通常であれば漢字で書かれることばが平仮名だったり、会話文が読点で終わっていたり。「、」で終わる会話文を多用する文章を読むのは初めて。この作品の雰囲気に合わせてなのか長野氏の作品は全てそうなのか、気になるところ。どの章も桜蔵の日常から始まり確かに現実世界を歩いていたにも関わらず、いつの間にやら夢と現のあわいへと誘われ、幻想的な雰囲気が漂い始める。読んでいてとても心地良く、あっという間にその世界観に惹き込まれた。それはそれは、美しい世界だった。2018/10/28
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