内容説明
中卒で家を出て以来、住み処を転々とし、日当仕事で糊口を凌いでいた17歳の北町貫多に一条の光が射した。夢想の日々と決別し、正式に女性とつきあうことになったのだ。人並みの男女交際をなし得るため、労働意欲に火のついた貫多は、月払いの酒屋の仕事に就く。だが、やがて貫多は店主の好意に反し前借り、遅刻、無断欠勤におよび…。夢想と買淫、逆恨みと後悔の青春の日々を描く私小説集。
著者等紹介
西村賢太[ニシムラケンタ]
1967年東京都生まれ。中卒。2007年『暗渠の宿』(新潮社、新潮文庫)で野間文芸新人賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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やも
62
学のない貫太と、やたら難易度高い漢字使われまくりな文体が、意外とマッチしてんのよね。他力本願で、開き直りばっかで、ただの自堕落な貫太の生活が、文学的に見えてくるもんね😅ろくでなし貫太の行く末を見てやろうと思ったけれど…こりゃダメだ🤦💦貫太がマジデろくでなしすぎて、もう私の前に出てくんなよ!!って思ってしまい、32Pで読むのやめることにする。【貧窶】という言葉を覚えたことだけが収穫です。★12021/12/07
団塊シニア
52
あさましさ、情けなさ、いやらしさを描いた私小説、泥くさく人間臭い内容である。2014/10/12
すしな
51
027-25.読んでいる間は、実話ベースのフィクションだと思っておりましたが、実際には著者の実体験が基になっていると知り非常に驚きました。自身の過去の退廃的な体験を、描くという作品のスタイルは聞いてはいたのですが、実際読んでみてかなり感慨深かったです。これまで、自分の過去の中で光の部分を振り返ることで未来を前向きに捉えようとしていましたが、闇の部分こそ、それを言語化して意味付けし直することのほうがが、未来に進むための本質的には大事なことではないのかもしれないなと気づかされた本でした。2025/04/06
GaGa
50
短編4編。この作者は初読み。「腋臭風呂」には驚かされた。尿道の奥から豚骨ラーメンのスープの臭って…マジか!?なかなか笑わせてくれました。他の三作はすべて同一人物が主人公(一人称が一作あるが)「潰走」は主人公は勿論ろくでなしだが、ヒステリックな大家夫婦もどこか切れていて、人間の浅ましさをうまく表現している。他の二編も中々の力作で、近年の芥川賞受賞者では相当完成されているのではないか?ただ、この手の私小説からどうやって脱皮していくかはまるで未知数だけれども。2012/08/17
ざるこ
48
北町貫多。中学を卒業し港湾人足のような日雇い仕事をしながら安アパートにひとり暮らし。後に知るのだが私小説らしい。「~である」など古めかしい文学的な装いながら、まぁなんとゲスい男だろう。酒と買淫で散財、家賃滞納、親に金をせびり、女のパンツの中に文句をつける。責められると逆ギレして更なる悪態をつく。腹立たしいのになんだろうこの楽しさ!一応反省する。自己嫌悪に陥るけど、すぐ怠けて同じ過ちを繰り返す。人間らしいとも思えたりして。「腋臭風呂」は相当笑った。下品だし自分勝手な貫多に呆れるけど私はとても楽しめました。2019/08/05