内容説明
たとえば某日。ねじまわしに導かれ、太ったひとばかりが住む村に行く。某夜、上野の立ち飲み屋台で国民的作曲家のよた話をきく。またある日、謎の珍味“こぎゅんぱ”に随喜し、獰猛な巨大モミジをみんなで狩りに行く―いしいしんじが聴き取った、ちょっと奇妙な世界の消息をお届けします。生きていることの不思議さと不気味さ、そして愛しさがくるくるときらめく、万華鏡のようなショート・ストーリー集。
著者等紹介
いしいしんじ[イシイシンジ]
1966年大阪府生まれ。京都大学文学部仏文科卒。2003年『麦ふみクーツェ』で坪田譲治文学賞受賞。04年『プラネタリウムのふたご』06年『ポーの話』07年『みずうみ』が三島由紀夫賞候補にノミネートされた。信州松本と三浦半島三崎に居を構えて海と山を往還しつつ、独特の世界観あふれる作品群を生み出し続ける(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
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Rin
70
一つひとつのお話は短くて、でもそれぞれ味わいが違う。読み手に少しの混乱と、独特のあと味を残してくれる。不気味なものから、切なさのあるもの、怖さにコミカルさ。そして、自分の人生をどう生きるのか。それを考えると「太った人の~」「緑春」が印象深い。人間はいろいろで、それぞれが違って当たり前。その当たり前の違いを忘れてしまうと、差別やいじめが生まれてしまうのかも。楽しく全力で、笑顔で生き抜く。それができるといいな、と思えた。どれも一回では味わい尽くせない。またいつか、読み直すとまた違った印象をもらえる気がします。2017/12/16
めしいらず
56
シャガールの絵に感じる祝祭的、牧歌的な雰囲気や、優しくて寂しげな眼差しの生き物達を、そのまま物語に移し替えたような世界観。久々のいしいワールドは彩り豊かな掌編集。個人的には著者らしい「太ったひとばかりが住んでいる村」が一等。社会通念上、信じられている幸福の形。自分達に馴染んだそれは、つい誰にでも当て嵌ると思ってしまいがちだけど、その人にはその人なりの幸せの形がちゃんとある。基準は今の自分の人生が楽しいか否かだけ。だって生きている時にその楽しみを味わうのでなきゃ、充実して生きているってことにならないから。2017/05/11
いたろう
31
一編一編、何が飛び出すか分からないおもちゃ箱のような面白さ。10~30ページの短編小説なのに、長編小説にできそうな程一つ一つの設定が奥深く、突飛で、ユーモラスで、メルヘンチック。この贅沢さ、まさに、いしいワールド。2013/12/13
ノクターン
20
なんなのでしょう、この短編集は。解説にあった歪んだファンタジーという言葉が合うのか。ディックブルーナのマットでシンプルな絵本に動物の生き血でポツンポツンと味付けしたような。「すげかえられた顔色」「薄い金髪のジェーン」「肉屋のおうむ」 感動とかホンワカとかもうお腹いっぱいです、な時にまた味わいたい。「太ったひとばかりが住んでいる村」最後のお口直しにぴったりでした。いしいしんじワールドの長編また読みたすぎる。『麦ふみクーツェ』てきな。なにがよいかな。2019/06/02
onasu
20
いしいさん、ごはん日記で「午前中、執筆」では、こんなんを書いていたのか、て妙な納得感。 何かに触発されるのか、体内から話しを紡ぎ出す術をお持ちなのか、とにかく早業でショートストーリーを綴られていく。いつも快調、てこともないのでしょうが。 で、本作。流行りの表現で言えば、やや黒しんじさんか。正直なところ、なかなか読み進まなかった。ファンタジー系の創作なんだけど、妙な下世話なスパイスが加味されている。 好みのミスマッチでしょう。2014/04/16
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