内容説明
叔母からの突然の電話で、祖母が風邪をこじらせて死んだと聞かされた。小学5年生の僕と父親を家に招き入れた叔母の腕は真っ赤に染まり、祖母のことも、急にいなくなったという従姉の紗央里ちゃんのことも、叔母夫婦には何を聞いてもはぐらかされるばかり。洗面所の床からひからびた指の欠片を見つけた僕はこっそり捜索を始めたが…。新鋭が描いた恐ろしき「家族」の姿。第13回日本ホラー小説大賞長編賞受賞作、待望の文庫化。
著者等紹介
矢部嵩[ヤベタカシ]
1986年、東京都生まれ。武蔵野大学在学中の2006年、『紗央里ちゃんの家』で第13回日本ホラー小説大賞長編賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
てち
117
なぜ?なぜ?なぜ? 読んでいて不安でしかなかった。それは、何もわからないから不安になるのであろう。本作の登場人物は、全員頭がおかしく常軌を逸脱している。彼らの考えてることは全くわからないし、謎も解決されない。そのわからなさや不条理が不安を掻き立てるのではないかと私は感じた。また、至る所に怖い要素が盛り込まれている。急にルビが振られていたり様々な仕掛けがなされている。つまり、内容だけでなく形にまで拘って恐怖を演出しているのだ。こんな作品は滅多にないのではないだろうか。2021/06/25
HANA
71
夏休み、親戚の家に泊まりに行く小学生のお話。先に同著者の『保健室登校』読んだ所、あまりに異常で頭の中引っ掻き回されるような感じを味わった。対して本書は主人公が割とまともな価値観持ってるので、あそこまで酷くは無いかな。と思ったのも最初のうち、読み進めるに従ってどんどんその世界観の中に引き込まれていき、奇妙な酩酊感すら覚えるほど。常に主人公の視点から描かれるので、家の中で見つかるものやおばさん一家の行動から、背後で何か起きているのにそれが何かわからないという居心地の悪さも。人を選ぶけど癖になりそうな一冊。2021/09/15
モルク
66
なんだろう、この胸のざわつき。夏休み恒例の従姉妹の紗央里ちゃんの家へのお泊まり。その前に叔母からおばあちゃんが数ヶ月前に死んだと不可解な電話がある。家のなかに紗央里ちゃんはおらず家出したと叔母たちは心配する様子もない…そんな中人間の指と歯を見つける。誰のもの、おばあちゃん?紗央里ちゃん?叔母夫婦の狂気、毎食のカップ焼きそばと頭の中は疑問符だらけ。突然現れた紗央里ちゃん、帰りの車での父の狂気、おじいちゃんは?その後の紗央里ちゃんは?ますます疑問符だらけ。恐怖と笑いの両立性、それがまた不思議と怖い。2018/04/22
Bugsy Malone
63
句読点がなくて読みにくい、いきなりルビがふえる、擬音や口語の羅列がくどい。視覚にまで影響を受けてとにかく読んでいて気持ちが悪い。読後感も悪い。性格破綻している家族や親戚に比べると、貴志祐介さんの『黒い家』の菰田幸子の方が感情が出る分まだまともに感じてしまう。忘れないだろうな、この小説は。この気持ちの悪さが作者に嵌められたということか。この本、凄いのか?2016/03/25
harass
59
読メレビュで気になったこの作家の作品を探して読む。第十四回角川ホラー小説大賞長編賞受賞作。小学五年生の主人公は夏休みに父の実家に数日泊まる旅行をする。毎年のことだが今年は少し違うところがある…… 主人公視点での展開で童話のような文体でグロい。人物たちの動機が明確な理由付けが無くあっても取ってつけたようなもの。残虐だがシュールで変な味がある。徹底して狂気ばかりでツッコミ不在の曖昧な意味の真空の恐怖。とりあえず集中してこの作家を読んでいきたい。2017/01/27