内容説明
ほおら、みいつけた―。きしんだ声に引かれていくと、死にかけたペットの山の中、わたくしは少女と出会いました。その娘はきれいだったので、もっともっと美しくするために、わたくしは血と粘液にまみれながらノコギリをふるいました…。優しくて残酷な少女たちが織りなす背徳と悦楽、加虐と被虐の物語。日本推理作家協会賞短編部門候補の表題作をはじめ五編を収録、禁忌を踏み越え日常を浸食する恐怖の作品集。
著者等紹介
遠藤徹[エンドウトオル]
1961年神戸生まれ。東京大学卒、同志社大学言語文化教育研究センター教授。2003年、「姉飼」で第10回日本ホラー小説大賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
てち
130
ホラーと言っても様々な怖さがある。例えば、幽霊や人間の残虐性などといったものだ。遠藤徹の作品は従来の怖さといったものではない。それは、先行きが見えず物語がどのように終着するのか不透明なことからくる怖さである。また、彼の作品は、設定がめちゃくちゃである。しかし、なぜだが知らぬうちにその設定を受け入れてしまう。これは、その設定があたかも普通かのごとく淡々と文章が書かれているからである。2021/05/26
Bugsy Malone
70
前作「姉飼」同様、不条理が当たり前に存在する著者独特の世界。先が見えない不安を煽る文章とストーリー。それだからこそ「姉飼」から続く短編の中にあって、今作収録の、家電と人との愛を描いた「カデンツァ」、人類終焉の情景を切り取った「桃色遊戯」の2編が深く心に沁みてしまう。2017/02/05
HANA
57
短編集。五つの作品が収められているが、どれも読んでいるうちに頭おかしくなりそうでとても良し。特に印象深いのは冒頭の「弁頭屋」と「赤ヒ月」で、どれも一文を境に世界が変わるのが特徴。後者はそれが冒頭にあるけど。あと「カデンツァ」は読み始めると題名の意味に噴き出しそうになる一品。筒井康隆かよ。「桃色遊戯」の他には類を見ない終末も特徴的だし。どれもグロと不条理に満ち満ちていて、『姉飼』にあった著者独特の世界観を存分に楽しむ事が出来る。とあれ五つの話それぞれに違った地獄が描かれていて、とても印象に残った一冊でした。2025/03/24
いちろく
49
紹介していただいた本。人の頭をくり抜いて弁当の容器に使用したり、校内で人の肉を貪る出来事が行われていたり、人と家電が恋に落ちて子供が出来たり、壊れた少女を拾ったり、ピンクのダニに埋め尽くされる終末だったり、と本来ならば理解不能な出来事が、日常の中でごく当たり前のように描かれている点が作品の特徴と感じた。ホント、この作品の世界観では普通なのだと。何が怖かったかって?この様な内容にも関わらず、一定のペースで淡々とページを捲っている自分に気がついた事。恐怖や違和感はなく作品として終始平然と受け入れていた。2018/12/17
みや
44
読書会のために再読。独特の世界観が本当に大好き。最初は奇抜な設定に面喰ったのに気付けばそこに馴染んでいて、自分がこれまで生きてきた日常の狭さに気付かされた。生首の弁当箱、家電との恋、内臓を露出する教師と生徒…それが当たり前の世界では私の価値観なんて容易く凌駕される。深く考えもせずに恋愛対象から電化製品を抜いていた過去の自分は、なんて狭い視野で生きていたのだろう。この本を読んで固定観念や先入観を壊すスイッチを手に入れて以来、物事の可能性が格段に広がり、毎日が更に面白くなった。世界を変えられるのは、自分自身。2018/12/02
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