内容説明
十二年前。十八歳で上京したぼくは、十歳年上の花菜子さんと出会った。三つになる息子と二人住まいの彼女と、ぼくは少しのあいだだけ一緒に暮らしていた。そんなある晩、花菜子さんは犬の首輪をつけて帰ってきた。それはある男と他人のままつながっている証だった。そして十二年ぶりの再会。ぼくと、花菜子さんは、他人のままつながることができるのか。人を愛することの苦しみと悲しみを描いた、恋愛小説の傑作。
著者等紹介
盛田隆二[モリタリュウジ]
1954年、東京生まれ。85年「夜よりも長い夢」で早稲田文学新人賞入選。90年『ストリート・チルドレン』(講談社/新風舎文庫)が野間文芸新人賞候補に。92年には『サウダージ』(角川文庫)が三島由紀夫賞候補となる
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感想・レビュー
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ミカママ
205
久々の盛田さんの恋愛作品、これが彼にとって事実上の処女作だそう。。作中「盛田」と出てきたのでもしや?と思ったら、やはり私小説とのこと。1ファンとしては、どの辺がリアルでどの辺が創作なんだろ、などと考えながら。年上の彼女、男女が繋がり合えない孤独感、焦り・哀しみ…盛田さん節をしっかり楽しませていただきました。 2016/08/16
おしゃべりメガネ
185
重たい…、体調があまり良くないトキに読んだから、なおさらダメージがミシミシ、カラダにきてます。わずか200頁足らずの作品ながら、これだけの重たい雰囲気の作品を書いてしまう作者さんの筆力、半端なく恐ろしさを感じます。作風、雰囲気に引き込まれるというよりは、知らないうちにどんどんのみ込まれるといったほうが正しいかもしれません。圧倒されるというのとはまたちょっと違う感覚ですね。男女間に生まれる微妙な駆け引きや、独特な空気感をこんなにもヒリヒリした緊張感で綴るとは、改めて作者さんのカラーに惹かれてしまいました。2016/10/09
じいじ
99
『夜の果てまで』で虜になった盛田隆二。処女作の『ラスト・ワルツ』を漸く読んだ。持ち味のテンポのいい文章が心地よいが、内容は重く、切ない恋愛小説だ。深夜ひっそりと書き上げた小説、しかも最初で最後の自分をモデルにした私小説とのこと。でも、面白かった。残念ながら実際の盛田氏は存じ上げないが、紙面からは男の淡い煩悩、相手を思いやる優しさなど氏の人柄を随所で感じた。バブル景気を間近にした、深夜の眠らない街新宿の情景が甦ってきて懐かしかった。2017/03/02
速読おやじ
26
盛田さんの自伝的小説。著者が上京した1973年、自身の小説が初めて活字になった1985年が舞台だ。この小説は1993年に刊行されているが、実際には処女作らしい。だからなのか、本人も文章が稚拙すぎるとあとがきで嘆かれている。確かに読み難い場面もないことはないが、世界観に引き込まれた。決して、共感することはできないし、淫靡な描写が好きなわけではない。あの時代にはまだこういう世界があったのかなと呼び覚ましてくれる。恋愛小説なのか、、2021/12/27
みっちゃんondrums
19
痛くて重くて暗い。これでも恋なのか。単純に好きか嫌いかでは済まない、どうしても離れられずに関わってしまう。「ぼく」が出会う女性は皆痛々しい。そこが70、80年代の東京の夜だから?「ぼく」=作者らしいが、どこからどこまでが事実なのだろう。彼ら彼女らはその後、どう生きたのだろう。『他人のままつながる』か・・・意味を考えたい。2017/02/10