出版社内容情報
日本推理作家協会賞長編賞受賞、著者渾身の代表作!あの夏、白い百日紅の記憶。死の使いは、静かに街を滅ぼした。旧家で起きた、大量毒殺事件。未解決となったあの事件、真相はいったいどこにあったのだろうか。数々の証言で浮かび上がる、犯人の像は――。
恩田 陸[オンダ リク]
著・文・その他
祖父江 慎[ソブエ シン]
著・文・その他
内容説明
「ねえ、あなたも最初に会った時に、犯人って分かるの?」こんな体験は初めてだが、俺は分かった。犯人はいま、俺の目の前にいる、この人物だ―。かつて街を悪夢で覆った、名家の大量毒殺事件。数十年を経て解き明かされてゆく、遺された者たちの思い。いったい誰がなぜ、無差別殺人を?見落とされた「真実」を証言する関係者たちは、果たして真実を語っているのか?日本推理作家協会賞受賞の傑作ミステリー。
著者等紹介
恩田陸[オンダリク]
1964年、宮城県生まれ。91年、第3回日本ファンタジーノベル大賞の最終候補作となり、『六番目の小夜子』でデビュー。2005年、『夜のピクニック』で第26回吉川英治文学新人賞、第2回本屋大賞。06年、『ユージニア』で第59回日本推理作家協会賞長編及び連作短編集部門賞。07年、『中庭の出来事』で第20回山本周五郎賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
498
小説作法としては、芥川の『藪の中』を踏襲しているだろう。緋紗子には特定のモデルはないようだが、俤としては谷崎の春琴あたりか。古都、金沢(明記されてはいないが)で起こった帝銀事件ばりの殺人事件を巡って、何人もが自分の知り得た情報を語る。起筆から展開部まではスリリングで、登場人物たちも緋紗子を別格としつつ、それぞれは相応に魅力的である。ただし、この手法からは読者にも真犯人の予想はつくし、その意味ではミステリーとしての妙味にはやや乏しいか。また、物語の終盤近くまでは緊張感を保っていたが、最後の謎解きに⇒2024/10/08
ehirano1
498
これまた凄いのに出会ってしまいました。第三者的記述が終始不穏な雰囲気を醸し出し、読者の数だけ「真実」があるのではないかと思いました。当方は、第一章と第二章で「ノンフィクション」「現実に起きた出来事」への記述が終始頭から離れず、誰が犯人というよりもむしろ「真実の持つ意味」に興味を惹かれました。2017/05/13
さてさて
428
インタビュー形式で「」括りになっていたり、なっていなかったり、第三人称的な書き方や記事のようなものや取材メモがいきなり出てきたり、それでいて時系列はバラバラ。何が本当で何が嘘なのか?この本は、推理小説として真実、結末を追うものなどではなく、茫洋とした独特な世界観の中に描かれる色んな人たちが同じ一つの事象をどう捉え、どう見ているか、その人の考え方、感じ方、そういった心の内を味わう作品なんだと思いました。そう、読者のこれまでの経験によって見える世界も変わり、読者の数だけ答えがある。なんとも興味深い作品でした。2021/03/02
パトラッシュ
406
映画『羅生門』のように同じ出来事を複数の登場人物の視点から描く作品と思っていると、最後は黒でも白でもないグレイゾーンのまま終わる。各章ごとに語り手も時系列も違って読みづらく、もつれた糸をほぐすのではなく、さらに複雑に絡まり合ってしまう。そこで作者は人間の見る目のなさをさらけ出し、読者に「こんな曖昧な証言で犯罪が解決された気になるなんて」と迫るようだ。しかも黒澤監督のように、わずかな救いさえ残さない。推理作家協会賞受賞作だが、従来のあらゆるミステリのパターンを否定する点にこそ作者の意思があったのではないか。2020/09/08
こなな
183
『雨は、海から降ってくる。』日本海側はまさにその通り。その表現に圧倒され、最初から引き込まれて行った。小説の中に小説があって複雑さを感じるにもかかわらず次から次へと展開していく場面がスルスルと頭に入っていく。面白くて読むのを止められなかった。緋紗子さんは、母親のことを実際どう思っていたのか。緋紗子さんは、裕福ではあった。しかし、愛情を感じていなかった。敏感な緋紗子さんは、自分が大切にされていないと感じていた。ということ?青澤緋紗子というお名前、金沢の壁の弁柄色と群青色からだと思う。2019/08/20
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