内容説明
架空の殺人事件をしたて、警察とマスコミがいかにして冤罪を作り出すか告発しようという無謀な計画。この企てに参加した鷹見は、DNA鑑定すら欺き見事に容疑者となる。しかし、彼に突きつけられたのは、まったく身に覚えのない女性殺害容疑であった。誰も取り合わない被告の言い分を信じ、戦後初の陪審制で行われる法廷にのぞむ弁護士・森江春策。民主的な裁判制度の復活に反対する勢力が仕掛けた壮大なトリックに、司法の命運を託された森江と十二人の陪審員はどう挑むのか。
著者等紹介
芦辺拓[アシベタク]
1958年生まれ。同志社大学法学部を卒業後、読売新聞大阪本社に入社。1990年「殺人喜劇の13人」で第一回鮎川哲也賞を受賞し、以後執筆活動に専念
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感想・レビュー
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かのこ
48
架空の殺人事件を仕立て上げ、冤罪事件のヒーローとなる計画に乗った鷹見暸一。しかし逮捕された彼は実在の強姦殺人事件の容疑者とされる。戦後初の陪審員裁判で裁かれる判決の行方は…。架空の設定ではあるけど、まさしく法廷もの!な作品。DNA鑑定すら欺くというあらすじに俄然興味をひかれた。とんでもー!やそんなことある??な展開も二、三あったが、原発事故や民主的な裁判制度が取り入れられた世界を、1998年に描いていること自体に驚かされる。タイトルにはちょっと違和感。かっこいいけど違うでしょって思ってしまった…。2017/05/25
coco夏ko10角
21
森江春策シリーズ。冤罪計画に参加した鷹見は身に覚えのない事件の容疑者に、弁護士に森江春策、そして十二人の陪審員たち…。一体どうやって無実を、と裁判が始まってからもうドキドキ。評決が出てからも最後の最後まで。シリーズ何冊か読んだけど確実に上位にくる面白さ。原発事故、裁判員制度、冤罪…この作品の単行本が発売されたのが1998年というのがすごい。2018/03/11
寝落ち6段
9
1998年刊。日本の裁判に陪審員制度が採りいれられた世界。現実では2009年に裁判員制度による公判が始まった。陪審員が予断を持たぬよう配慮がされたり、陪審員のために公判の要点をまとめたり、分かりやすい資料の用意や進め方をしたりと現実の裁判員制度でも為されていることが書かれている。なので、陪審員制度の難点や怖さも書かれている。他にも冤罪やDNA鑑定など扱っているテーマは大きい。事件の内容もおもしろい。2020/01/02
本みかん
4
★★★★★地震による原発事故、裁判員制度、DNA鑑定。いまとなっては当たり前の事が出てくるが、この本が書かれたのは1998年だという。法廷ミステリだけれども、裁判が始まるのは中盤以降。そこまでが少しまどろっこしいが、裁判が始まれば止まらなくなる。面白かった。2021/12/01
ソニ子
4
とりあえずめっちゃおもしろかった。展開が全然読めずに進んでいくから、とにかく続きが気になって気になって。最後までしっかりおもしろくできてて大満足。しかし、原発事故のことがちらっと出てたりして、ずいぶん前の本なのに妙にタイムリーだなぁ、と思った。裁判員制度といい原発事故といい、ちょっと考えさせられた一冊。2011/05/17