内容説明
瀬戸内海に浮かぶ島で暮らす少年・壮吉は、二か月前から登校を拒否し、亡き父の生前の仕事を調べはじめた。父は、どうして家業であった漁師をやめ、電力会社の仕事を始めたのか?誰よりも島の自然を愛していたはずの父が、自然破壊をもたらす工事に加担したのは何故なのか?東京から来た姉妹・秀世と陽子、トランペット吹きの史麻さん、同級生たち、担任の島尾先生など、様々な人たちとの関わりの中で、今、壮吉は大きく変わろうとしている―。自分自身の生きる道を厳しく見つめて成長する少年の姿を描く長編。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
SURI
8
ふと灰谷健次郎氏の小説を読みたくなって図書館で手に取った。環境破壊という社会問題を背景に感受性豊かな生徒たちの教師や学校に対する不満、葛藤などを描き出す心理描写はさすがだなと舌を巻く。「親の世代がいい学校いい社会と思ってるところに行かなければ落ちこぼれだと烙印を押される。自分の価値観を持つための試行錯誤なんか全然許してくれなくて~思い通りにならなかったらお前の将来は闇だとかののしられてさ。僕らは脅迫されて行動してるんだと思う」という生徒の不満と似たものを現代の生徒たちも抱えていると思う。下巻が楽しみ。2016/10/13
tono
5
「迷ったり、悩んだりすることって、とても大事なことなんじゃないかな。自分に対して悩むんだもん。」 美しい。瑞々しい。匂い立つ。 灰谷健次郎の多くの作品に見られるように、今回も学校が一つの舞台だ。しかしその一方で、海が抱く学外の舞台で迸る青春の息吹が、坩堝のような熱を孕みながら、喉元を熱く駆け抜ける。 三島の「潮騒」を彷彿とさせる、とは言いすぎなのだが、ここで描かれる悩みや哀しみ、苦しさや痛みは、人間の本質に素直に迫り、考えさせられる。 続きが早く読みたい。下巻へ続く。2015/08/26
amane
4
高校3年生の壮吉。登校拒否や亡き父の生前の仕事を調べながら自分の価値観を模索していく。思春期はこんなこと感じてたかなと思いを巡らす。自分の価値観を持つための試行錯誤を許してくれない大人たち。学校に行ける条件や勉強に励む環境があるんだから、親であれば自分のできなかったことを子どもに託す気持ちで、言ってしまうんだろうなぁと思う。でも自分の意志が活かされなかったら不幸ー迷ったり、悩んだりすることが大事なんだよな。思春期って難しいね。2015/03/07
悠月
2
何回読んでも、色々な事を考えさせられる。たくさんの人に読んでもらいたい。2013/09/23
ひめゆり
2
これは三回目くらいかな?ときどき読みたくなる本です。私が読んだことのある灰谷さんの作品の中で、壮吉は結構オトナっぽいと思っています笑。個人的に秀世のキャラがあまり好きではありません←(黙)人と人の繋がりについて考えさせられる作品。2010/09/21