内容説明
5年前、中国から同じ船でやってきた阿扁(アーピェン)たち15人。だが、毎年仲間は減り続け、残るは9人。減った6人は流〓(リウマン)となり、阿扁と会った直後に皆死んでいた。自分は死神なのか。自問する阿扁だったが―(「死神」)。歌舞伎町の暗黒の淵で藻掻く若者たちの苛烈な生きざまを描く傑作ノワール、全6編。
著者等紹介
馳星周[ハセセイシュウ]
1965年、北海道生まれ。横浜市立大学文理学部卒業。96年、『不夜城』でデビュー。翌年、同作品で第18回吉川英治文学新人賞を、98年、『鎮魂歌―不夜城2』で第51回日本推理作家協会賞を、99年、『漂流街』で第1回大藪春彦賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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乱読太郎の積んでる本棚
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
357
最近の馳星周は、直木賞作の『少年と犬』など、多彩なジャンルの作品を書いているが、これは新宿の黒社会を描いた6篇から成るノワール短篇集。篇中の多くは「古惑仔」を主人公としたものだが、読後感は極めて悪い。みじめな気分が残影し、しばらくは暗い気持ちが払しょくできない。そして、それこそがまさに馳星周のノワールの真骨頂なのである。篇中には「降誕節的童話」と題された清涼剤かと思わせるようなものもあるが、これとても、もう惨憺たるありさまだ。2020/12/17
hit4papa
55
在留外国人らにスポットを当て、暗黒の世界を垣間見せる短編集。出稼ぎ労働者が憧れているきらびやかな日本が描かれていますが、隔世の感が否めません。とは言え、出口なしの窮乏に喘ぐ人々の日々は、息苦しさを覚えるほどに真に迫っています。『聖誕節的童話』は、愛し合っていた二人が壊れていく軌跡に戦慄します。『笑窪』の転落する様はありがちですが、酒とギャンブルに溺れていく様は鬼気迫るものがあります。『死神』会った友が偶然死を迎えることから「死神」と渾名をつけられてた男が主役。ラストは、絶望感を強く印象付けられます。2023/05/18
ねこまんま
28
短編だけど、ダークな世界が十分満喫できます。もう、救いようのないやるせなさ。私もそうだけど、大抵の人はこういう世界に縁がないだろうから、どこまで本当にありそうな話なのかが分からなくて、逆にリアリティを感じます。「クリスマスストーリー」が、あまりにもベタな転落ぶりなのに、スピード感があって一番面白かった。2016/12/13
PSV
28
クリスマスの話が良かった。あと「笑窪」。新宿の妖しい闇を切り取るのがホント上手い人だなぁ、と再認識。基本、読んでる最中も読んだ後も、良い感情は浮かんでこないのだが、綺麗な感情、優しい感情だけを人間は求めるわけではない。怖いもの見たさ、人の不幸といった、負の感情全開の馳劇場。まるで麻薬のように、ジワジワと癖になっていく。 ★★★☆☆2012/08/12
ランフランコ
6
人は弱いものだ。この本を読んでいると力強く清く正しく生きていくことの方が奇跡ではないかと思う。人が崩れ落ちていく時なんて些細なきっかけとちょっとした不運なのかもしれない。そんなに思慮深く、用心深く生きてはいられない。どれこもこれも見事にアンダーグラウンドの救いの無い話だ。まさに馳星周といった感じ。 2016/03/18