出版社内容情報
モーパッサン[モーパッサン]
著・文・その他
太田浩一[オオタ コウイチ]
翻訳
内容説明
やりくり上手の妻に先立たれ、失意の日々を過ごしていたランタン氏。妻が遺したイミテーションの宝石類を店に持って行ったところ、じつは…(「宝石」)。伯母の莫大な遺産相続の条件である子どもになかなか恵まれず焦る親子と夫婦を描く「遺産」など6篇を収録。魅力再発見の第2弾。
著者等紹介
モーパッサン,ギィ・ド[モーパッサン,ギィド] [Maupassant,Guy de]
1850‐1893。1850年ノルマンディ生まれ。パリ大学在学中に普仏戦争に遊撃隊員として従軍。戦場での苛烈な体験が、のちの厭世的な作風に大きな影響を与えたといわれる。その後海軍省に勤務。母の紹介でフローベールと知り合い、作品指導を受ける。30歳の時に発表した「脂肪の塊」が絶賛され、作家専業となり、33歳の時に発表した『女の一生』はベストセラーになった。旺盛な著作活動を続けたが神経系の発作に襲われ、苦痛から逃れるために薬物に溺れた末、自殺未遂事件を起こしパリの精神科病院にて死去
太田浩一[オオタコウイチ]
フランス文学翻訳家。中央大学兼任講師(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
やいっち
78
「脂肪の塊」は何度読んだことやら。読んだ回数だとドストエフスキーの「白夜」に匹敵するか。「女の一生」も二度三度。モーパッサン短編集も2冊目。アイロニーに富むというより、貧富を問わず人間社会への根底的な嫌悪…侮蔑感を感じる。独特なユーモアに包まれているが、救いにはならない(救いを求める気はさらさらないようだが)。2024/01/15
星落秋風五丈原
44
「宝石」妻の裏の顔に一瞬はっとするもののラッキー!と宝石を売り飛ばしちゃう夫「遺産」遺産目当てで結婚したものの遺産ゆえにぎくしゃくしちゃう家族。えっやっぱり子供の父親ってそういうこと?知ってて知らぬふりをする家族怖い。「悪魔」金が惜しいからってそんなことを。「パラン氏」本当のことを言ったのに追い出された家政婦が一番可哀想だ。「難破船」いやその思いは吊り橋効果だと思うぞ。「車中にて」何も起こらない旅行だったはずなのに。そーだねキャベツは神父だけが見たんだよね(笑)2023/08/15
ころこ
36
共通している特徴は、プロットの順番の滑らかさです。非常に文章が上手く、ストレスなく読み進められます。人物配置が明快に示されて戯曲のような小説たちです。しかし、設定が示された段階で、その後に何が起こるか予測ができてしまいます。そうでない作品でも、作者の意図通りに表現されており、それ以上のことは書いていない。作者にある「本当のこと」しか書いていない印象を受けます。分からない部分、未消化な部分が読者に残らないため、余韻がありません。読み易いこととトレードオフの欠点ですが、読んで良かったと思っています。2018/11/18
tokko
26
「宝石」「遺産」「パラン氏」の夫婦間における愛憎劇がおもしろい。心のありようや情の変化と流れは本当にうまいなぁと思います。あと登場人物の罵り合い(笑)はひどい、こんなこと言われたら誰だって腹が立ちますよね。あと小作品として収められた「車中にて」と「悪魔」も、短いのに印象に残ります。2020/10/15
kaoriction@感想&本読みやや復活傾向
26
モーパッサン先生!私はすっかりファンだ。昨夜、『首飾り』その他 を読み終えてから、こちらの短編集を手にし、一気に読んでしまった。全く古びない作品たち。一体、先生の何に惹きつけられるのだろう。人間心理の真髄、観察眼はさすがだ。行きつ戻りつしながら変わってゆく立場。お金と出世と愛と。人間の業って哀しくて、怖くて、寂しくて、なんとも言えない。「生きていると、どんな出来事に巻きこまれるかわかったもんじゃない…でも時が、時が経てば…あらゆるものが移ろう」。下手な恋愛小説を読むならモーパッサンを一冊、私は薦めたい。2019/05/22