内容説明
長老作家ドリッフィールドとその妻ロウジー。同郷で少年時代を過ごした主人公にとっては特別な想いがあった。亡きドリッフィールドの栄誉を称え伝記を書きたいと友人に協力を依頼されたのをきっかけに、今はもう誰も知らない二人の本当の姿―奔放で変わり者だが、愛嬌に溢れ人々を魅了する男女の姿を、ひとり回想してゆく。モームが最愛の女性をモデルに、風刺や批評を交えて彩り豊かな物語に仕立てた、愛すべき名作。
著者等紹介
モーム,サマセット[モーム,サマセット][Maugham,William Somerset]
1874年パリ生まれ。イギリスの作家。一年間のドイツ留学を経てイギリスに戻り、いったんは医者修業を試みるが、作家を目指す志を捨てられず執筆に専念。徐々に劇作家として活躍しはじめる。しかし、劇作家として頂点にあった30代後半に自伝的長篇小説『人間の絆』(1915)を書きあげることに没頭した。第一次大戦での諜報活動の体験を経て、19年、画家ゴーギャンをモデルにした長篇小説『月と六ペンス』を発表。驚異的なベストセラーとなり、作家としての地位が確立する。以後も戯曲・小説・短篇と様々な作品を執筆。旅行好きでも有名で、訪れた国々を舞台にした作品も多い。1965年没
厨川圭子[クリヤガワケイコ]
1942年生まれ。中国東北部瀋陽(当時の満州、奉天市)に生まれる。慶應大学英文科卒(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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遥かなる想い
223
モームが描くロウジーという女性の存在感が 圧倒的である。亡くなった老作家の妻を 私の視点で回顧しながら描写する。 ひどく魅力的に読めるのは 誰もが若き心に 持っていた自由奔放さへの憧れなのか.. 1930年に書かれたこの本、 当時の文豪ハーディーをモデルにして 物議を醸したらしいが、 逆に言えば当時の風景が素直に描写されている 証拠なのだろう。心の中で生き続けた ロウジーへの想いと追慕の念.. 題名の「お菓子と麦酒」は「人生を楽しくするもの」という意味 らしいが、ロウジーに捧げる本なのかもしれない。2016/05/03
まふ
118
作家である「私」ことアシェンデンが大作家であるドリッフィールドの伝記ものを書こうとしている中堅作家アルロイ・キアの助力をすべくドリッフィールドの最初の妻であるロウジーやほかの女性たちのつながりを語った物語。ドリッフィールドがトマス・ハーディだとされたこともあるようだが事実は違うらしくガッカリ。英国の作家たちの内輪話めいていてそれなりの面白さはあった。「ドリッフィールドの出身階級が高くない」など読者は余計なことを意識しており英国は相変わらずメンドウクサイ国である。G1000。2023/10/31
扉のこちら側
107
2017年190冊め。【301/G1000】お菓子とビール、人生を楽しくするもの。去っていった彼女の思い出。ロウジーの奔放だが愛情あふれる描写は魅力的。ただ彼女にはもう少し知性のきらめきがあってほしかった。『人間の絆』同様、著者の回顧録かと思ってしまうほど語り口が真に迫っている。時折混じる皮肉のスパイスもよし。2017/02/23
星落秋風五丈原
74
【ガーディアン必読1000冊】発表当時、ドリッフィールドとキアのモデルについて論争が巻き起こった。モームは人物描写がうまいので、特に後者はモデルと目された本人が読んで「これは自分だ!」とすぐに気がついたほど似ていたらしい。 いやこれは二重の意味で本人がきつい。いくらフィクションだと断っていても「モームはそんな風に自分の事を見てたのか!」と知るダメージと「ふーん、あの作家ってこういう人だったんだ」と一般読者にイメージが広まるダメージ。作家なので褒めている所はあるが人格についてこれだけ書けば天秤は一方に傾く。2017/09/05
コットン
70
良い性格だけれど性に奔放な女性主人公のモデルが名門の娘らしいが現代ならどんな物語になるのだろう。【ガーディアン紙が選ぶ必読小説1000冊】2016/03/27