角川文庫<br> 壁抜け男

角川文庫
壁抜け男

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  • サイズ 文庫判/ページ数 179p/高さ 15cm
  • 商品コード 9784042859017
  • NDC分類 953
  • Cコード C0197

内容説明

ある日突然、壁を抜ける能力を手に入れた、登録省の役人デュティユル。彼は新しい上司と手紙の書き方をめぐって対立する。屈辱的な扱いを受けたことを恨んだデュティユルが、壁から頭を出してその上司を罵ると、混乱した上司は精神病院に入院してしまう。この件をきっかけに、パリの街に次々と奇妙な事件を巻き起こしていくデュティユル。しかし壁をすり抜け続けていく彼の行く手には、思わぬ落とし穴が待ちかまえていた…。奇抜で幻想的な世界に、人間の優しさと悲哀、そして残酷さを巧みに描いた、鬼才エイメの珠玉の作品集。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

(C17H26O4)

74
人間の可笑しさと悲しさが描かれています。残酷だけど優しさも感じます。風変わりでシニカルで好きなんです。壁を通り抜けられる男、自分を分裂させ際限なく数を増やせる女、一日おきにしか存在できない男など、彼らのとる行動に呆れつつも同情してしまいます。「七里のブーツ」はいつも印象的。一跳びで七里を越えるというブーツを母親に買ってもらった極貧の少年の行動に胸を突かれます。ブーツを手に入れたら世界中から何かを少しずつ盗んで母親を楽にすることを夢見ていた彼が実際に持ち帰って来たものは。目の前に清い光が現れるようなのです。2019/06/28

YM

74
シュールレアリズムの小説に興味があって手に取りました。表紙がかわいい。5つの短編で、どれも現実離れしてる。壁をすり抜けられたり、自分を好きなだけ増やせたり、2日に1日しか存在しなかったり。それを物語の1行目からさらっとかいてるとこがすごい。当たり前ぽい。ユーモアもあるし、一瞬うまくいくんだけど、シニカルな終わり方ばかり。まあ、人生てそんなもんだよなあ。いいことばっかありゃしない。でもいいことだってあるじゃない。2015/01/03

こばまり

50
素っ頓狂な境遇に置かれても人々が粛々と日常生活を営んでいるのが可笑しかったりいじらしかったり。最後に収められた一編は主人公が子供の為かお伽話色が一層強い。没後半世紀が経とうとしているのに不思議な瑞々しさを湛えた作品群だ。イベント【奇妙な味海外読書会】に参加して読みました。2016/04/29

のせ*まり

33
同時に別空間に何人もの自分を分散させることができる女、二日に一度存在が消滅する男、壁を抜ける特技を持つ男など不思議な力を持った人たちの短編集。表題作は四季がミュージカル化したことで知った。大人のためのSF寓話集。寓話が苦手だからか入り込むまでに時間がかかった...大学生時代にパリに行った時、モンマルトルで人のオブジェが埋め込まれてる古いマンションがあって、なんだろ?って思ってたけど、あれは壁抜け男だったのか、、、。街と芸術が自然に解け合う国って素敵。2017/04/02

アリ子

26
早川書房の中村真一郎(翻訳)のものと読み比べ。早川書房の方は数年前に読んだのに(いつもどおり)かなり忘れていた。そんな中印象に残っていた「サビーヌたち」はやっぱり強烈。早川書房の方には収録されていない「変身」も良かった。 お気に入りの一冊2016/12/13

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