内容説明
キングズマーカムの町始まって以来の大イベント、8万人を集めた野外コンサートは無事おわった。だがウェクスフォードの安堵も長くはつづかなかった。会場となった緑地のはずれから、とんでもないものが見つかったのだ。顔面を無残に叩きつぶされた女の死体である。被害者は地元出身の女、ドーン・ストーナー、そして殺害時刻はコンサート以前と判明した。ドーンが緑地へ向かうのは近所の主婦が見ていた。ドーンは何のためにそこへ行ったのか?そして死体の着衣が変っているのはなぜなのか?ウェクスフォードの捜査の前に、やがて恐るべき悲劇の構図が浮かびあがってくるのだが。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
hit4papa
51
ウェクスフォード警部シリーズ第8弾。フェスの最中、顔面を殴打された女性の死体が発見されます。早々に地元出身の女性であることが判明しますが、どこから来たのか、何故、舞い戻ってきたのかが突き止められません…。ねじれた心理描写がお得意の著書ですが、本作品は至極正当な警察小説ですね。足で証拠を集める警官たちがたどり着いた真実は…という、じれったくもある過程が楽しめます。結局のところ、やっぱりねじれにねじれていたというオチであるのですが。フェスのスターの歌詞にねじれの一端が垣間見えるという凝りようです。2021/12/08
Tetchy
27
直前に食糧を買い込み、わざわざ着替えて殺された死体という奇妙な状況と被害者とフェスの出演者との奇妙な繋がりから事件の謎が綻び、全容が浮かんでくる。犯人は1/6を残して犯人の自供から判明するがメインの謎は犯人は誰かではなく、なぜ被害者は殺されるに至ったかというプロセスにある。人の心や感情を考慮せずに起こした悪戯が招いた悲劇は、そのまま1973年当時の荒んでいた政情から生まれたラヴ・アンド・ピースを叫びながら、歌で世界を変えられると鼓舞したロックスターたちに群がる大衆への痛烈な警告のメッセージに繋がっている。2013/03/24
みみずく
22
ウェクスフォード警部シリーズ第8作。いつもは静かなキングズマーカムの町で行われた野外コンサート。この大イベントに対して警部より若い男やもめのバーデンの方が文句を言ったり腹を立てているのが面白い。その理由の一つは彼の息子が原因で、男手ひとつで微妙な年頃の子供たちを育てているのでつい過保護になってしまう様子。そんな彼をたしなめたりしながら警部は見守っている。肝心の事件の方はなんとももやもやした後味が残る。でも人によっては、法廷で下される罰より、世間や崇拝者から断罪される方が厳しく辛い場合もあるのかなと思った。2015/06/10
bapaksejahtera
10
シリーズ8作目。ここ迄全て読む。70年代初の若者プロテスト時代。時代を映す歌手達による野外コンサートが、本作馴染みの警察管内で開催される。混乱が予想された催しの引け際、近くで女性の惨殺死体が発見される。実は催しの最大のスターは地元出身で、被害者とは幼馴染であったと後に判る。意外な犯人とその使嗾者が主人公警部により披露される最終迄、複雑で異様な人間関係の紐解きと心理描写は、老読者の苦手とする所。包容力に富んだ老成首席刑事の相棒バーデン刑部の、妻死後の家庭の様子が詳述される処は興味深いが、やや苦手な作だった。2025/01/17
菱沼
4
再読。感情移入できる人物がいない。少ない材料で、ウェクスフォードも魔法のように結論を導き出したものだと思う。2019/07/03