内容説明
ひょんなことから、富豪グリーンリーフに息子を連れ戻してほしいと頼まれ、貧乏青年トムはイタリアへと旅立つ。イタリアでトムが出会ったのは、金にも女にも恵まれた放蕩息子ディッキー・グリーンリーフだった。裕福で自由奔放なディッキーに羨望を抱くトムだったが、ふとした瞬間に、自分とディッキーの容貌が酷似していることに気づき、あることを思いつく…。サスペンスの巨匠ハイスミスの代表作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
NAO
32
大富豪からの依頼を受けてイタリアにいる息子を連れ戻しに行くリプリー。貧しい青年の金持ちに対するリプリーのひりひりするような劣等感、焦燥感、嫉妬、疎外感。リプリーのそういった鬱屈した心理と、場当たり的な生き方はリンクしているのだろうか。リプリーのこの場当たり的な生き方と地中海の溢れる光のためか、犯罪小説なのに暗さがなく、ただまぶしい。このまぶしさは、もろく危ういリプリーをまともに見ていられないというこちらの思いからくるのだろうか。それにしても、リプリーは、『グレイトギャツビー』のギャツビーにすごく似ている。2015/08/16
akio
17
図書館でやっと見つけた一冊、こんなに面白いのに本屋さんに置かれてないのが不思議でなりません。全体を覆うもの凄いプレッシャー、常に計算し、取り繕い、そしてまた騙し、次の行動を図る。そんな孤独な物語にまさにとりつかれてしまいました。ハラハラドキドキしたい方におすすめです。最後の最後まで楽しめました。アラン・ドロンの名画(観ていないのですが)のイメージが強いのか、「太陽がいっぱい」の一文と出会えたときはうっとり酔いました。2015/08/18
よし
12
自分の読解力の低さか、翻訳のせいか登場人物たちに感情移入ができずあまり楽しめなかった2022/03/13
tera
10
主人公のトム・リプリーは終始身勝手な行動をしているにもかかわらず、追い詰められる彼を応援せずにはいられない。なお角川文庫版の本書は少々訳が古いので現在入手できる河出文庫版の方が良いかもしれない。コーヒー牛乳 (カフェラテのことかな?)とかほのぼのするが。2016/10/06
Pochi
5
アラン・ドロン主演「太陽がいっぱい」の原作なんだそうです。主人公リプリーが、なぜこのようなことをしでかしてしまうのか? それにいたるまでがしっかりと書いてあるのですけれど、いまいちよくわからないのです。原作が出版されたのが1955年。同じ行動を現代でとったら、科学捜査であっという間にお縄になってしまうだろう、なんてことを思いながら読んでしまいました。2014/03/10