感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
323
比較的初期の中編小説。1848年、時にドストエフスキー27歳。「感傷的ロマン」とし「空想家の追憶」と副題に謳っている。確かに後の『罪と罰』(1866年)などと比べると、遥かに甘ったるい小説である。物語は4夜と次の朝から構成されるが、それらの全てがロマネスクな幻想だともいえそうな内容である。主人公の恋そのものに実態が希薄であるばかりか、相手のナースチェンカとの関係そのものも脆弱で果敢ない。まさに白夜のような朧気のなさである。それは比喩的な意味においても、また実態としても所詮は4夜の夢でしかなかった。2025/02/22
takaichiro
130
貧しいインテリ青年が空想する淡い恋物語。神秘的な白夜のペテルブルク。夢を描いた少女と出会い、恋に落ち、生涯の運命を約束する。二人の愛が最高潮に達した瞬間に幻影は崩れ去り、街角に消える。二人の恋、気持ちの高ぶりを共感しながら、最後は主人公と共に夢から現実に引き戻される。淡い夢から目覚めた時のやり場のない虚しさ、余韻。時間の経過に従い懐かしさと共に整理・記憶されていく様々な思い出。説教じみた大作で有名なドストエフスキー。本作ではデリケートな愛情を持った詩人としての一面を見せる。ペテルブルグ、行ってみたい。2020/02/14
新地学@児童書病発動中
127
ドストエフスキーにはめずらしい、甘い抒情的な失恋物語。主人公の青年と美しい少女が瞬間的に心を通わせて、その気持ちがもろく崩れ去っていくところが読み手の心に物悲しい感情を呼び起こす。後期の人間の心の暗部まで足を踏み入れた作品を書く前に、ドストエフスキーがこのような物語を作り上げていたことが興味深い。この叙情性を土台にしていたからこそ、『罪と罰』や『白痴』のような多くの人にアピールできる小説を書けたのかもしれない。2015/04/12
青蓮
109
読メでオススメされて読みました。モスクワへ行った恋人の帰りを待つナースチェンカと空想家の貧しいインテリ青年との淡い恋の物語。この作品はドストエフスキーが持つ「毒」は薄めで、内容も短いので、初めて読む人にも比較的読みやすい作品だと思います。結末はなんとなく予想できましたが、単純にナースチェンカが狡いと言うか酷い。でも恋愛において、こう言ったことは良くあることなのかなと思うと切ないです。フラレた青年が酷く哀れ。「ああ、幸福な人間というものは、時によるとなんてやりきれないものなんだろう!」2016/03/03
(C17H26O4)
87
白夜のせいにするのがきっといい。孤独な青年の恋の夢は白夜がみせた幻想なのだと。彼の饒舌さも、彼女の言葉に舞い上がる心も。だってナースチェンカの恋の夢は現実なのだ。「あたしはあなたの愛に価する女ですもの、その愛に報いることのできる女ですもの…ああ、あなたはわたしの親友です」「どうぞお忘れにならずに、いつまでも愛していてくださるように、あなたのナースチェンカを」 2019/12/27